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きみきみ さくらに ねがいごと
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きみきみ さくらに ねがいごと-2

「……俺は、どうしてこうなんだろう」
図書館の帰り。歩きながらぼそりと呟く。誰にも聞こえないように、口の中だけで。
もとより目立つ方ではなかった俺だが、高校に入ってから格段に友人も人と喋る回数も少なくなった。
高校生の頃、俺は大人なのだと思っていた。
いつも冷めた目で周りを見て、ゲラゲラ笑う級友達と距離をおいていた。
話題になっている芸能人や、雑誌や漫画、ゲームの話になんかついていけなくて、俺はひとり本を読んで休み時間を過ごしていた。
俺はそんな級友達との差を、奴等は子供で俺は大人なのだと思っていた。
でも、違ったんだ。
臆病で口下手で友人の輪に入れないことを、勝手に奴等が子供なだけだと思い込んだ。
そうして過ごした高校三年間のおかげで、俺はすっかり人と話すことを恐れるようになっていた。
家族ですらだ。特に、できる兄貴達と比べられるのが嫌で、親と話すことも少なくなっていった。
笑い方なんて忘れてしまった。
そして俺は愛想を尽かしていく人々に対し、被害妄想を抱くようになっていた。きっとあいつは今、俺の悪口を言っているに違いない。俺と話して、つまらない時間を過ごしたと思っているに違いない――そんなふうに。
だから、葉山との会話も楽しい筈なのにどうしても躊躇ってしまう。
俺が彼女をお茶に誘ったら、きっと迷惑するだろう。そんな思いが先行する。
「……俺は、どうしてこうなんだろう」
俺は空を仰いで再び呟きを漏らした。
闇夜というには若干明るい空。
桜祭りということで、橙色のぼんぼりが商店街を淡く照らしていた。
大学近くの商店街を抜け、公園を通る。桜並木にも商店街と同じぼんぼりが、公園を包むようにして飾られていた。
公園の端には、ひときわ大きな桜の木。
毎年花見のシーズンになると、この大きな木の下、若いサラリーマン達が夕方のうちから、花見の場所取りをしている様子が見える。今日は平日だが、ちらほらと花見をしている大学生達の姿があった。
騒ぐ彼等の姿を見ていると、何だか辛くなる。
「俺だって、本当は……」
本当は、あんなふうに仲間達と馬鹿騒ぎしてみたい。あの中心にいる男が自分で、傍らの女が葉山だったら――。
けれど、そんな願いは無駄だ。考えても詮のないことだ。
俺はなるべく公園と桜の木を見ないように、顔を背けて早足でその場を去ろうとした。
その時だった。

「ちょいとそこ行くお兄さん」
最初、俺が呼ばれているということに気がつかなかった。
急ぐ俺の肩をぐいと掴み、再びそいつは声をかける。
「ちょいとちょいと」
「!?」
いきなり肩を掴まれれば、驚かないわけがない。
俺は反射的に相手を突っ撥ねてしまった。
「あ痛ッ」
「あ……す、すみません……」
振り払った俺の腕が相手の顎に入り、俺を呼びとめたその男は身体をのけ反らせた。
俺は思わず頭を下げ、男の様子を見つめる。
(………)
今時着物を着ているなんて、年寄りだってなかなかいない。
俺の目の前で顎をさすりながらも笑みを浮かべているのは、二十半ばの男だ。紬の着流しに下駄という出で立ちが目を引くが、何よりその着物が男のくせなのに薄い紅色というのだから、更に目立つ。
「こんにちは、何か嫌なことでもあったんですか?」
「………」
知り合いでもない男に、いきなりこんなことを訊かれて、警戒しないわけがない。俺は胡乱げにその男を見やった。少し長めの茶色い髪に薄紅の着物。図体はでかいが優男といったふうだ。


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