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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉後編-13

「覚悟はしていたはずなのにな。」

争いの中に身を投じていれば必ず味わう生死の別れ、何度も経験した筈なのに、その度に強く願い誓った筈なのに。

「聖と紅奈も、生きている可能性の方が低い。オレ達は今ここにいる事が幸せなんだと思わないと。」

 切なく囁いた声が痛い。頭の中で反響する度にその深さは増していくようだった。自分が生き残れた幸運を痛い程に感じ取っていた。それと同時に甦る記憶があった。

 さっき言えなかった言葉がある。口にするには覚悟が必要だった。でも伝えなくては、この先の未来を深い闇で染めてしまいかねない。

「皇子。みなさんも。」

「なんだ?」

 声に出して皆の意識を自分の下に引き寄せた。今ここで言わなければ、自分の持つ情報を与えて開示しないと、また被害者を出してしまうかもしれない。揺れる思いを断ち切りレプリカは口を開いた。

「サルス様の異変にお気付きですか?」

視線を向けた先はカルサ、しかし皆がカルサと同じような反応を示した。息を飲んだといった方が正しいかもしれない。レプリカの予想しなかった状況、いや、少し可能性があった状況だった。この反応は間違いない。

「何かご存じなんですね?」

そう感じ取ったレプリカは、その考えをそのまま声にした。誰もが眉をひそめ苦々しい表情を浮かべる中、一人顔を上げたままの女性がいた。

この場では一人、異質になった女性に目がいくのは自然な事だった。思わず全てを忘れて女性を目に焼き付ける。女性はレプリカの視線に気付き、落ち着いた雰囲気で穏やかに微笑んだ。

そんな二人のやりとりに気付いた貴未がかわりに声にした。

「圭、っていうんだ。」

貴未の声に全員が反応した。それはあの時、マチェリラとの再会を手助けしてくれていた頃より、幾分か成長し、幼い面影は消えている。

「失礼しました。私はレプリカと申します。以前は風の神官・環明様にお仕えしておりました。」

レプリカはすぐに我に返り、いきなり凝視してしまった非礼を詫びながら名乗った。

「圭といいます。前世名はシャーレスタン、と言えば伝わるでしょうか?」

その言葉に息を飲んだのは、レプリカと同じくさっきここに着いたばかりのカルサと千羅だった。

「シャーレスタン!?」

カルサの叫びに圭は頷く。漆黒の髪と瞳は白い肌を余計に強調させた。そのせいか彼女の表情がよく分かる。圭は懐かしそうに微笑んでいた。

シャーレスタンとして生きていた頃は鮮やかな銀色の髪を腰の辺りまで揺らしていた。今とは印象がまるで違う。


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