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『あたしのビョーキ』
【同性愛♀ 官能小説】

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『あたしのビョーキ』-5

 スローインからの速攻に、さすがの木皿サンも追いつかない。あたしはというと、日野先輩にしっかりマークされてパスの軌道上に近づけない。
 そうこうしているうちに時間を削られ、石井の笛の合図で試合終了。ワンゴール差まで詰め寄ったものの、三年の堅牢な守りを破るには至らなかった。

「よーし、今日はここまでかな。ミーティングするから集まって」

 石井はテキパキと指示を出すと、体育館の隅っこでホワイトボード相手に紅白戦の寸評を始める。
 オフェンス時の上がり方、ディフェンス時の時間の潰し方、パスの誘導とカットなど、トクトクと説明してくれる。

 あたしの前には日野先輩が座っている。
 ショートカットの髪は耳を隠さず、ユニフォームが汗で肌に張り付いている。やや大きめなせいか、首筋の辺りも覗けてしまう。玉のような汗がいくつも噴出し、ダマを作ると、そのまま下に流れていく。
 着替えのときに見た日野先輩の背中。スクール水着の跡の残る肌は筋肉質ではなく、程よく締まって柔らかそうだった。
 先輩はどんな風に喘いだんだろう。いつもは後輩に向かって低い声できびきびと指示を出すくせに、男の前では猫なで声だったら可愛いな。あたしも先輩のこと、鳴かせてみたいな。

「おい恵、何ぼーっとしてんだ? やる気ないならレギュラー外すぞ」

 石井の声にあたしは我に返る。

「あ、スイマセン。ちょっと張り切りすぎて、飛ばしすぎました」

「まあ、恵は練習でも手抜かないからな」

「はい、ヤルキなら人一倍あります!」

 ちょっとおどけたように言うと、皆笑ってくれる。
 ただ、あたしがどういうつもりで言ってるのか、多分ワカラナイだろうな。
 ね、先輩?

***―――***―――***

 梅雨の明けた最初の日曜日、練習試合が組まれた。
 相手は大河原中学。我らが西河内とは昔から因縁がある。
 共に全国制覇を目指し、必ずといっていいほど決勝、順決勝で当たる相手。そのせいか、彼らに勝つことがいつの間にか至上命題となっていた。しかし、今年に限っては運悪く当たる前に両校敗退してしまい、エキシビジョンマッチとして組まれた。
 これは余談だけど、卒業生の多くが同じ高校に進むこともあり、数少ないギャラリーには近くの高校のバスケ部顧問が混じる。もしかしたら午前中の試合は大河原と西川内の品定めなのかもしれない。つか、これで推薦が決まるって話もあるし、夏休みを楽しく過ごしたい子はかなり気合が入っている。

 主審のホイッスルと同時にボールが宙に放たれる。日野先輩はあと一歩背が届かず、大河原ボールで開始する。
 ボールを持つやいなや、速攻を基本とする大河原は開始五秒で得点を挙げる。学区内の強豪に数えられるだけあって一人ひとりの攻撃力が高い。ただし、デフェンスが弱く、西川内得意の連携に翻弄され、すぐに追いつき、追い抜く。

 試合は一進一退を繰り返し、ハーフタイムを迎える。

 石井は相手の連携の拙さを攻めるよう指示を出し、選手はみなフォーメーションを確認しあう。後半、大河原もなんらかの対策を打ち出すだろう。果たしてどこまで自分達の力が通用するのか、それを試すこと。これだからバスケはやめられない。


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