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『あたしのビョーキ』
【同性愛♀ 官能小説】

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『あたしのビョーキ』-16

「はなしてください」

「ヤーだ。島田ちゃんがもとの良い子に戻ってくれるまで放さない」

「だって先輩が……先輩が不潔だから!」

「不潔って失礼な、ちゃんとお風呂入ってるよ」

「そうじゃなくて……、その、先輩、はなしてくれませんか?」

「だから良い子にならないと」

「違うの、あの日何してたか」

 なるほど、「話して」か。しかも「あの日」か。
 あたしは耳にかかり始めた髪をうるさそうにかきあげながら、ため息をつく。
 その一方で、潤んだ瞳であたしを見る島田ちゃんに惚れそうになった。

***―――***―――***

「何飲む? コーヒー? それとも紅茶? あ、ジュース……はないんだっけ」

 深刻な表情をする島田ちゃんを放って置くわけにもいかず、あたしはひとまず家に連れ込んだ。居間でもいんだけど、どうしてもっていうんで、あたしの部屋に入れた。本当は散らかってるからやなんだよね。それに、さ。

「いいです。それより……」

 あたしがクッションを渡そうとすると、彼女は人のベッドに腰掛ける。
 んー、あんまりベッドに座られるの好きじゃないんだよね。里奈や由香にも極力座らないようにしてもらってるけど、なんでやなんだろうね。

「先輩、あの人と何してたんですか?」

「あの人って?」

「とぼけないで下さい。あの大河原の六番ですよ。何度も先輩をマークしてた」

「バスケについてと再来年のことについて。多分一緒の高校行くと思うし、それに……」

 指折りに言い訳を考える。同年代の子だったし、いくらでも思いつくわな。
 けど、振り返ったとき、既に彼女は泣いていた。

「ちょっとどうしたの島田ちゃん」

 あたしは駆け寄って真っ赤になった目を擦る彼女の手を取る。嫌がる素振りは無い。けど、妙な胸騒ぎ。

「だって、先輩、なんで嘘つくの? キス、してたじゃないですか……変なことしながら……」

 しゃくりあげるからところどころ聞き取りづらい。けど、何が言いたいのかは充分にわかる。見られてたんだ。ずっと。

「あの子、芳江っていうんだ。そんで、ちょっとさ、あたしのこと好きっていうから、ね」

 あたしは腹をくくることにした。秘密でいいことだけど、でも、いい訳しても彼女の不審感を募らせるだけだ。

「好きって、二人とも女の子じゃないですか!」

「好きってさ、男とか女じゃないから」

 でも、受け子との「好き」はそれよりもっと表面的な、ただの肉欲って奴なんだろうな。

「だってだって、先輩不潔です! 試合の最中も変だと思いました! うくっ! 何度もファールしてっ、ほんとっ、は、ヤラシイことっ、してたんですよね! バスケしなが……いぐっ!」

 途中から彼女のしゃくりあげが酷くなり、言葉を飲み込んだというより、むしろ呼吸困難に近い。

「ちょっと島田ちゃん、大丈夫?」

「触らないで下さい! や、放して! んぐ、えっぐ!」

 パニックを起こした彼女は喉を押さえて目を白黒させる。しかもだんだん顔色が真っ赤になりだし、見るからに苦しそうになる。


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