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fantasy ability
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reality ability‐第8話‐刻印・【真】‐-11

数十分間、お互いに顔を見ずに考えていた。すると、皇希が不意に喋る。

「‥‥彼女の名前は“神原 維蕪(かみはら いぶ)”。これ以上は言えない。」

皇希の表情はドコか苦しそうだった。織音は一瞬、皇希を見たが直ぐに天井へと視線を戻した。

「‥そう。彼女は‥維蕪さんは“真実の真実の真実”とも言っていたわ。」

織音は言った。答えを期待せずに呟く程度で。

「‥‥そうだな。それも本当だ。‥‥きっと話す。‥‥必ず、“絶対”に、俺の“真実”と気持ちを。‥‥今はまだ言えないんだ。」

皇希が珍しく体を震わす。右手は左腕の二の腕部分を掴んでいた。そんな皇希は初めてだった。織音も初めてそうで少し驚きを隠せなかった。
その様子を見ていた彼女が問い掛ける。上半身だけを起こす。

「ううん。私もね、自分の本当の気持ちを知ってね。‥‥皇、聞いてくれる?」

そして、そんな皇希を見ている織音のこれまでになかった表情は真剣さや真面目がより一層に伺える。

「‥‥ああ。」

皇希は織音を見なかった。答えだけが織音に返ってくる。重苦しい雰囲気が部屋に煙のようにふわふわと漂い始めた。

「私は貴方を独占したい。‥仁の時は友情だったのに今では愛情に変化したの。」

織音は切ない表情に一瞬なるが直ぐに戻る。

「‥私は貴方の素っ気ない態度が好き。それは貴方の近くにいるとその者に“死が訪れる”という事を避けるためよね?」
「‥‥‥‥」

織音は皇希をずっと見ている。皇希の表情に変化はない。そこに答えもない。だが、いつも隣にいた織音の言っている事は間違えではないだろう。

「私は貴方の何気ないように行動が好き。‥‥感じていたわ。別れた後の私や凰輝、誠慈に光を守っていたのでしょう?」
「‥‥‥‥」

皇希は少しだけ視線を変えた。‥‥真実だろう。敵の前では動揺しない皇希は織音の前では隠せない時が必ずある。それは行動で示された。

「私は貴方の優しさが大好き。‥‥こうして私の記憶を解放したのは私に対する愛の行動かなって私は思うの。」
「‥‥‥」

これには織音も自信なさげに言った。だが、皇希は唇を噛み締める。‥‥当たったようだ。

「‥‥大好き。私は貴方の全てを愛してるわ。これからの事もね。」

織音は真っ直ぐに皇希を見つめていた。だが、その想いすら皇希に届く事はなかった。


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