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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-58

 リリムレーアの顔色から生気が失われていた。無理も無い。普通の人間ならとっくに出血死している量の血液が流されていた。それでも、竜族のリリムレーアはまだ生きている。
「あ、うう」
 ぎりぎりと、全身を縛り付ける鎖が引かれる。その度に鮮血が滴り落ちた。
 純白のドレスは見る影も無く、どす黒く血に汚れている。
 絶対に諦めないつもりだった。
 誰にも負けないつもりだった。
 それでも、また自分の弱い心が出てきてしまう。
 まだ死にたくない。こんな所で終わるわけにはいかない。だから。
「…誰か、助けて」
 誰に聞こえるわけもない小さな声で、リリムレーアは呟いた。
 瞬間、教会の高い天井が破砕する。
 大きな音を立てて崩れる瓦礫。それらを突き破るように黒い塊が、弾丸のように落下してきた。
「なんだ!」
 驚愕するヨシュアをよそに、展開する防御結界に弾かれる何か。
「え―」
 結界を波立たせて地面に派手に衝突する。それを見てキョウが声をあげる。
「…テツヤ」
 リリムレーアは信じられないものを見るように、瓦礫に埋もれる少年を見た。落下の衝撃は凄まじく、教会の石畳には大きな穴が空いている。
「痛てて、死ぬかと思った…」
 むくりと身体を起こすテツヤ。その意外にも無事そうな姿を見て、教会内にいる誰もが思った。
 いやいや、普通死んでるし。
「君は、あのビルにいた少年か…」
 全身を血で濡らしたヨシュアが冷めたような声を出す。テツヤの出現によって狂喜乱舞していたところに水を注されたようだ。
「ば、ばか。何をしている。はやく、かえ、れ」
 瀕死のリリムレーアが弱々しい声をあげる。言葉を発する度に視界が歪んだ。
「お前、何だよ、その格好…」
 呆然とリリムレーアを見つめるテツヤ。
途端に、リリムレーアは恥ずかしくて顔を背けた。
 こんな姿をテツヤに見られたくない。こんな無様な姿を…。
 それなのに、テツヤはゆっくりとこちらに向かって歩き出す。
「ダメだよ、テツヤ! 逃げて」
 ひくひくと痙攣しながらも、首だけ動かしてキョウが懇願するように叫ぶ。
瞬間、テツヤは頭の中で、何かがブチンと切れる音を聞いた。その音を合図に、目が痛いほど熱くなる。事実、その目には変化が訪れていた。
テツヤの黒瞳が溶ける様に、眼球全体を覆う。
「テ、テツヤ…」
「ずいぶんやられたな、キョウ」
 ライバルであり親友である少年に視線を移すも、テツヤの歩みは止まらなかった。
 ばちんっ
 何かに突然阻まれた。黒一色に覆われたテツヤの目の前には何もない。それでも、そこには見えない壁が存在した。
 防御結界という名のそれは、魔方陣の周りに立つ術者たちが張った透明な防壁だった。それは単に防御だけではなく、触れれば火傷をする有刺鉄線のような役割もある。五人の術者によって張られた結界を破るには、単純に五人以上の術者が必要だった。
「なんで君が生きているのか知らないけど、ここには入って来られないよ。そこにいるワーウルフに喰われるのがオチさ」
 血に濡れた端正な顔を拭うヨシュアが余裕の表情を浮かべる。
 そしてテツヤを囲むように人狼たちが低く唸っている。
 人狼族に術者たちの結界。ヨシュアの外敵に対する備えは万全だった。尤もヨシュアの考えていた敵とは違うようだが。


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