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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-35

「その対価は?」
 銃を持った何人もの男達を従えて、夕子が聞く。
「アカシックレコード」
 神の啓示を告げる様に、リリムレーアは呟いた。
「まことか…」
 途端に夕子の目が険しくなる。
 それは神の書物だった。過去、現在、未来を問わず全ての出来事が記されている。全ての真実、問いに対する答え、不可能と言われる技術、術式。文字通り全てが記されているという。ヴァジュラと並んで竜神が神と言われる由縁となった至宝。我が祖先アシュラが敗れた原因。つまり、それを持つことが意味するのは―。
「私は神になる気などありませんが」
 夕子の声が低くなる。人間には過ぎたる道具だ。それを軽々しく与えると言う少女に怒りすら覚えた。
「違う。あれははっきりとした形をもっていない。父のモノであったのではなく、父にはアカシックレコードを読む力があったのだ。だから、私は…」
 二人を包む空気の密度が増す。
「王座についた暁には、お前達を開放する、と言っている。もう二度と、異能の力を持った子供が生まれてくることがないようにする。王ならばそれが可能だ」
「…は?」
鋭かった夕子の顔が一瞬途切れた。素っ頓狂な声が洩れる。
「それが我らの望みだと?」
「そうではないのか。強すぎる力は不幸をもたらす。かつてはどうであったか知らないが、今のお前たちは地位を純粋な力だけで維持しているわけではあるまい?」
 何かを見据えるように、リリムレーアはゆっくりと目を細めた。
「つまり、永久制約術式を解く、と?」
 しぼり出すように、夕子がある言葉を口にした。それは焔一族に掛けられた永久に解けることのない呪い。世界最高クラスの術者集団を擁する焔家ですら千年の間解く事の出来なかった最強の呪いだった。恐らく、その呪いの出所は。
「永久制約術式は、父がアカシックレコードを用いて掛けた呪い。ならば、私が王となり父と同じ力を持てば解ける」
 夕子を見つめた瞳を微動だにせずリリムレーアは言い放つ。
「ですが、永久制約術式を使えば私を始め、鉄也さんも意のままにできるはず。姫様のご希望通りの結果になります。それをしないのは何故です?」
 尤も使おうとした時点で、全力で抵抗するが。
 その問いに、初めて顔を伏せるリリムレーア。何かを考えて唇を噛み締める。
「…私は、あの力を認めない」
 再び夕子を見据えるリリムレーアに惑いの色はなかった。
「私は父を尊敬しているし、愛してもいる。だが、父の権力は、アカシックレコードによる絶対の力は、正しかったのだろうか。無敵のはずの父上が何故、兄上に…。自分の息子に倒されたのか! アカシックレコードがあれば全て予期できたはずなのに」
 身を乗り出して叫ぶリリムレーア。
「あの力は間違っている。どこか歪なのだ。だから私は、永久制約術式など使わない。永遠に人を縛り付ける力など!」
 その瞳は金色に輝いている。
「…それならば、我らの力を得て何をしようと言うのです? あなたは」
 リリムレーアの金色の双眸は鋭く、そのうちに秘められた強い意志をぶつけられた気がした。そこにあるのは光りだけではない、かすかな陰りもある。だからこそ、その瞳は深く底が知れない。
「全てを、元通りにする。アカシックレコードによって狂わされたお前たちや、天界を開放する」
 気付かぬ内に、夕子も身を乗り出して叫んでいた。
「そんなことの為に、現在、アカシックレコードを操る神となった兄君と戦うと言うのですか? 勝てるはずもないのに」
「勝つ。私には、他に選択肢が無い!」
 他を圧倒するかのようにリリムレーアは宣言した。
「ふふ、非現実的ですね。少しも勝算がない」
 その言葉とは裏腹に夕子の頬に一筋の汗が流れた。夢物語を語る少女。それなのに、何故こうも惹きつけられるのか。


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