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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-33

 茶室の横にある待合室は、無駄に豪勢な部屋だった。
 よく見慣れた場所。子供の頃に、ここで色々な人々に面会した。財界人やら政府高官、果ては一国の代表まで。
 最高級の服を着せられて、教え込まれた笑顔を振り撒いた。
 リリムレーアとは屋敷に入ってすぐに別れていた。
 おそらく気を利かせた柿崎が、身なりを整えさせているのだろう。
 胃の中に鉛が入っているかのような感じがする。掌は汗に濡れていた。
 なぜ俺はここにいるのか。
 リリムレーアに無理やり連れてこられた。それが表面上の理由。だが、心どこかにいつまでも逃げ続けているわけにはいかないと言う思いもあったのかもしれない。
 室内は、落ち着いた色調で統一されている。その中央の椅子に俺は長時間腰掛けている。周りには見覚えのないメイドの姿が見える。自分のいない約二年間で、この屋敷の顔ぶれも随分と変わったようだ。
「浮かない顔だな」
 背後からリリムレーアの声が聞こえる。
「なんせ二年ぶりだからな」
 振り返りながら答えて、思考が停止した。
 そこに立っていたのは、本物の姫君だった。
「…」
 肩を出したスマートな白いドレス。それでも、所々に施された刺繍の細かさからその高級感が窺える。何よりも肌の色との相性が抜群で、ドレスの白がよく映えている。
 今までくすんだ色だと思っていた髪は綺麗に結い上げられ、滑らかな銀色の輝きを放っていた。
「何を見とれている」
 リリムレーアは意思の強そうな目を緩ませて、勝ち誇った顔をした。
「そ、そんなんじゃねえよ!」
 ツンデレか、俺は。
「夕子様の準備が整いました」
 遅れて入ってきた柿崎が茶室に先導するように促す。
 どう考えても、夕子というよりリリムレーアを待っていたという感じだった。最上級の賓客の扱いと同じだ。
 一体何者なんだよ、この女。
 そう思いつつも、柿崎に続いて待合室を後にした。

 座敷の奥で、和服を着た女性が座っている。
 まだ若い女性だった。たしか、二十七、八くらいだったはずだ。
 決して行儀が良いとは言えない楽な姿勢で座る女は、左手に持った扇子を閉じたり開いたりしている。しかし、その女の一見落ち着きのない仕草には不思議と優雅な雰囲気を感じさせた。
「お久しぶりですね。鉄也さん。少し背が伸びたかしら」
 宴会場かと思えるくらい広いこの座敷は、たしか茶室だったはずだ。わびもさびも全くない茶室だった。
「なにが、鉄也さん、だ。昔、さんざん俺をいじめたくせに」
「ふふ、相変らずお行儀の悪い子ね。でも、男の子はそれくらいの方がいいのかしら」
 従兄弟の夕子が口に手を当てて上品に笑う。
「今日、来たのは、こっちのお姫様に誘われたからだ。俺には用なんて全くない」
「お前、いつにも増して無礼になってないか」
 リリムレーアに痛いところを突かれた。たしかに、この家にいると必要以上に悪ぶってしまう気がする。
「ふふ、それも判っているわ。鉄也さんは、お婆様のお見舞いに行ってらっしゃい。私と二人きりの方が話しやすいでしょうから、姫様は」
 くすくすと笑う夕子の目つきが鋭くなる。
「そうだな。お前の母のことは後で話してやるから、お前は席を外せ」
 リリムレーアも顔を強張らせて夕子を見つめる。
「なっ! ここまで来て俺をのけ者にする気かよ」
 思わず立ち上がって言うと、リリムレーアがこっちを見ずに呟いた。
「昨日、私が気絶していたのを良いことに…」
「わああああ! こんなとこで、親戚の前でなに言い出すんだよ! わかったよ、出て行くよ! 覚えてろよ、ちくしょう」
 我ながら小者のような捨て台詞だった。

 鉄也が出て行き、静まり返った部屋でリリムレーアと夕子は向き合っていた。
「とりあえずは、人間界へようこそと申し上げるべきでしょうか」
「ふん、そう改まることはない」
 夕子が探るようにリリムレーアを見つめる。
「では、単刀直入に申し上げます。お望みは、鉄也さんといったところかしら」
「話の成り行き次第ではそうなるな。アレは本当に直系か」
「本当も何も、焔を名乗れるのは直系のものだけにございます。いくら近いとはいえ、傍系の私などは焔ではなく、紅を名乗っております」
「そうか。しかし、あれはキョウコに比べると、随分弱いようだが」
 キョウコと口にした瞬間、夕子の眉がぴくりと動いた。扇子を開いて口元を隠す。


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