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過激に可憐なデッドエンドライブ
【ファンタジー その他小説】

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過激に可憐なデッドエンドライブ-10

 朝の二人組みは一体なんだったのだろうか。
 怪しすぎて突っ込めないくらいだった。でも、夢にしては、リアルすぎる。大体、歩きながら夢を見るってどういうことだよ。疲れているのかな、俺…。
 ってまだ十代だし。
「テツヤ?」
 隣を歩くキョウが心配そうに見つめている。
「ああ、悪い。ちょっとぼーっとしてた」
「はは、まだ眠いのかい? 授業中もあんなに寝てたのに」
 俺たちは授業を終えて屋上へ向かっているところだった。うちの学校は貧乏なので、道場などという立派なものはなく、俺たちはいつも屋上で練習している。夏は暑く、冬は寒いという最悪な場所だ。
「全く、あれだけ授業中寝ている癖に、この前の期末テストで全校二位だもんな」
「いや、一位の奴に言われても…」
 スポーツでも勉強でもキョウは俺の一歩前を行く。背格好は同じ、顔だって俺と同レベルなのに、女子の人気もキョウの方が高い。もしかしたら、キリーよりモテるかもしれない。唯一、キョウの死角と言えば少し空気の読めない天然なところだけだろうか。
「ところで、テツヤはスキーかスノーボード出来るの?」
 今度行く旅行絡みの話題だった。
「ああ、母さんが生きてた頃は毎年行ってたからな。一応、両方出来るよ」
 よくトロントの別荘で遊んだものだ。とはいえ、別荘とか言うと引かれるし、実家のことを思い出すので極力秘密にしている。
「ごめん、お母さんのこと思い出させちゃったね…」
 キョウがすまなそうにズーンとうつむく。こっちが申し訳なるくらいの落ち込み方だった。
「も、もう十年くらい前のことだから気にしてないよ。それよりキョウはどうなんだ?」
「僕はスキーとかしたことないんだ。だから、今回結構楽しみで」
「ほほう…」
 これは、チャンスかもしれない。この真面目な無敵超人が俺に負けるとどうなるのか、かなり興味があった。
「遅いぞ! お前ら」
 その時、頭上で野太い声がした。
 いつのまにか部室兼更衣室である屋上の踊り場に着いていたようだ。上で鷹山が仁王立ちをしてこっちを睨んでいる。
 部活動時の鷹山は真面目で厳しい、時もある。
 鷹山は既に胴着に着替えていた。なぜか胴着の裾には赤い斑点がぽつぽつと付いている。
「鷹山、どうした? その血」
「ふふふ、なんだかんだ言って、てっちゃんが心配してくれたのは嬉しい。でも、安心しろ。これはケチャップだ」
 家庭科の授業でオムライスを作っていたら付いてしまってなと言いながら豪快に笑う鷹山。
 なんで胴着で家庭科を! とかは突っ込まずに無視した。
 なんだか残念な気分になって黙々と胴着に着替える。そんな俺を鷹山がやけに熱い視線で見つめていることはわかっていたが、更に無視した。
 早くも日が傾き始めた屋上で練習が始まる。
冬場の練習なので胴着の上からウインドコートを羽織っている。
「まったく、やっぱり屋上で空手っていうのも無理があるよな。寒いし、足の裏汚れるし」
 コウサクがやれやれといった感じでぼやく。
空手なので屋上でも裸足でやる。だから汚れる上に夏場は火傷するほど下が熱くなっているし、冬は逆に凍りつくほど冷たい。コウサクがぼやくのもよくわかるのだ。
「コウサク! つまんないこと言ってないで始めるぞ! 基本っ!」
 部長モードの鷹山が太い声で言うと、みんなで輪になって正拳突きを始める。
 最初の一時間は基本的な技の練習や筋肉トレーニングが中心だった。
 その後は、二人一組になって実際に当てる技の練習になる。
 この時の俺のペアは川田だった。
 川田は俺より背が低いが、その分筋肉がもりもりとついている。その様は、あたかも小さな岩と言った感じだった。筋肉がありすぎて学生服の第一ボタンが締まらないらしい。
「…じゃあ、テツさんからどうぞ」
 川田は寡黙な性格で、言葉使いは丁寧だ。いかにも格闘家らしい感じだった。
 しかし、この川田も我が部の例外ではなくアレだった。
「おし、じゃあ十発で交替な」
 今は前蹴りの練習だった。交代制で構えた相手の中断に前蹴りを入れる。受けるほうにとっては随分と痛い練習だ。


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