かなわないヒト-4
「さ、伯…待って」
ほら、すぐ手を止められる。
「ごめ、ん。ごめん、好きに、なってごめん。佐伯のこと好きで、ごめん。……こんなのずるいけどお願い」
「お願いだから、今だけは私のものになって」
恥も見栄も後悔もなかった。
欲しい。
ずっと佐伯が欲しかった。
みんなに与えられる優しさを独り占めしたかった。
私だけに笑いかけて欲しかった。
私を愛して欲しかった。
何より、…立派に社会人をやる佐伯に憧れて、こうなりたいって目指してた。
「樋村……ったく、あのなぁ、」
「ふぇ、っく、うぅ〜っ」
「……聞いてる？」
「うぅ〜〜っ！！うっ！う〜っ」
「あーハイハイ」
さっきまでとは全然ちがう手つきで背を撫でられて、子供みたいに泣きまくった。
「俺も男だけど、好きじゃないヤツ抱けるほどバカじゃないって」
「……ぅえ、だっ、好きな、子…」
「いるよ、いた。さっきまで確かにお前じゃないヤツが好きだったよ、俺」
「わ、わけ、わかんな…い」
「俺も。でも、泣くお前みたら、なんかやられた……俺でいいなら泣き場所になってやりたいって思ったんだよ」
嘘じゃないの？
これ、夢みてるんじゃないの？
「こういうのって、調子いいよな。……こんな俺じゃ好きになれない？」
ぶんぶん首を横に振ると涙が跳び散った。
「好き、好き、すきぃ…」
「樋村って泣き虫なんだな」
「だってぇ〜〜っ」
でも、じゃあ！
「じゃあ、なんであんなやり方すんのよ〜っ」
「ひたすら甘やかしてやろうかなとか……あとやっぱ樋村から確かな言葉聞きたかった」
脈あるか、とか、なかったことにされたくなかった
ぼそっと呟かれた言葉に（佐伯だってバカじゃん）と思う反面（わ、嬉し〜）…とか照れる辺り私は佐伯に敵わないなぁと思った。
惚れた弱味もあって、社会人として憧れで、ずっと…ずっと好きだった人だから。
しょうがないよなぁ
と幸せなため息を吐きながら、とりあえず…
体の疼きをなんとかしないとと、締め付けられるような子宮に、また泣きそうになった。
どうやら私は相当…佐伯にまいってるらしい
ウソ………すっかーりまいってます。