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交差点
【ホラー その他小説】

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交差点-5

『憶えてる?』
少年がしゃべり始めた瞬間、太一は来るな、来るな、と小さい声で連呼し始めた。真一が落ち着かせようとしてもいっこうに治まらない。
『オマエが一年前に引いちゃったランドセルの少年。忘れたわけではないよね?』
微笑で近づく少年に、後ずさりする太一を、真一はただただ見つめていた。
『あの日、オマエが届けてくれたら、死なずにすんだのに。なんで。なんでだよ!!』
急に怒鳴り始めた少年に、太一はもう一度体をびくつかせた。
『俺は、酒を飲んでたんだ。だから、だから、助けきれなかったんだよ。』
『そんなの言い訳だろ。俺は、そのせいで死んじゃったんだぞ。オマエのせいで。』
『悪かった、本当に悪かったと思ってる。だから許してくれ。たのむ。』
必死に許しを請う太一に対し、いっこうに許す気配のない少年は、ついに行動に出た。
『あ、車が来た。オマエも俺と同じ目に遭わせてやるよ。』
『止めろ、止めてくれっ!!』
『長かったなぁ。たった一年が凄く長く感じる。さぁ、死のうか。』
少年は、太一の袖を強く引っ張る。少年の力が強すぎて、太一はそのままずるずると道路へ引きずり出される。
『止めろよっ!頼むから!止めてくれよっ!!』
少年はそんなこと気にもとめず、道路へどんどん引きずってゆく。横からは車が後数メートルまで近づいてきた。そこで始めて真一は止めに入った。しかし、所詮は子供の力。かなうはずもなかった。
『じゃあね。』
道路のど真ん中で太一を置き去りにした少年は静かに消えた。車はすぐそこまで来ていた。
『先生!!捕まって!!』
真一は手を差し伸べ、太一に救いの手を差し伸べた。そのまま引っ張ろうとしたのだ。無謀ではあるが、やってみる価値は十分にあった。
一生懸命に手を伸ばした真一にホッとした顔を見せた太一は、その手を掴んだ。そのまま真一は一生懸命引っ張ろうとした。そのときだった。
さっきまで微笑んでいた太一は、悪巧みをしたようににやっとした。その瞬間、ぐいっと真一の手を引っ張り、引きずり込んだ。そして、自分は逆に歩道側へ行き、真一をより真ん中へと突き飛ばした。
突き飛ばされた真一は、尻餅をついて道路のど真ん中に座り込んだ。その瞬間車は真横まで来ていた。
後数センチで車に衝突しそうだった。そのとき、太一がにやっとして言った言葉を真一は聞き逃さなかった。
『俺を助けたばっかりにな。』


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