投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

交差点
【ホラー その他小説】

交差点の最初へ 交差点 3 交差点 5 交差点の最後へ

交差点-4




新しい風を思い切り吸い込み、学校から三十メートル付近まで来たところで胸のドキドキをおさえられなくなった。ここまで来て行かなくなることはまず無い。しかし、いよいよと言うところで真一は皆にどう思われるか、を気にしてしまったのだった。
『フー。』
聞こえるような大きな深呼吸をして、歩みを近づけたそのときだった。
“ポツ”と音がして、連続で雨粒が降ってきた。その瞬間やっと思い出したのだった。あの、事件を。
ゾッとした。目の前には交差点。しかも、今は雨が降っている。この交差点をわたれば、ひき逃げにあうかもしれない。今すぐ引き返そう。その方が安全だ。
そう感じた真一は、きびすを返して家へ帰ろうとした。しかし、道路はたくさんある。交差点もたくさんある。ここで引き返せば、その時点でまた事故に遭う可能性だってあるわけだ。そうなれば元も子もない。あれこれ考えていると、気付くと横に男の子が立っていた。
ビックリした真一は、こけそうになった。その少年はランドセルを背負っていたことから小学生だと察しがついた。こんな雨の中、傘もささずに何をしているのだろう、と思ったが自分も傘を差していないことに気がつき、安易に理由が想像できた。
その少年は、交差点の信号が青になった瞬間横断歩道をわたろうとした。この子は全然知らないのかな、と思いつつも止めようと言う気にはならなかった。
すると、横から二つのライトが近づいてきた。危ない。そう思った真一は、咄嗟に助けようと言う気になった。まだ間に合うか。それは分からないが、とりあえず助けなければ。中三にしては十分すぎる正義感だった。
手を伸ばし引っ張ろうとした。しかし、届かない。それならいっそのこと、向こうへ突き飛ばしてしまえばいいのだ、と向こうにドンッと押した。はずだった。背後から何者かに引っ張られ、その目の前を車が通りすぎていった。
『大丈夫か!!』
太一だった。何が起きたのか、と困惑した表情で太一を見つめた。すると、太一はこう切り出した。
『ここ最近、うちの生徒が何人もひき逃げにあってるんだ。』
それはニュースで知っていた。だからといって、何か言う気にはなれなかった。
『その、ここ最近というのは、俺がこの学校に赴任してからなんだ。それが、なぜだか分かるか?』
分かるわけがないだろう、と思いつつ、静かに首を振った。
『今、オマエは何故あの子を止めようとした。』
『それは、あの子がひき逃げにあうかもしれないって思って、それで……。』
『その子は今どこにいるんだ。』
『え?』
前を向けばそこにあの子が立っているのだろうと思っていた。しかし、そこに少年の姿はなかった。
どこかに走り去ったのか、とも思ったが、今までの間にそんな時間はない。車で逃げない限りは不可能だろう。
『どこに、いったんだ。』
思わず口に出してしまうくらい、不思議な、おかしい、と言った感情だった。
『あんな子、実際は存在してないさ。』
意味深な発言に首を傾げた真一は、太一に尋ねようとした。
『おまえは、危うく殺されるところだったよ。今の車にひかれてな。』
俺が?口に出そうとしたが、のどがひっついてしまい上手くしゃべれない。すると、気付けば真横にあの少年が立っていることに気がついた。体がびくつき、心臓が止まるかとも思った。すると、ようやく隣にいる太一も気付いたようで、太一は真一以上のビビりを見せた。しかも、一瞬だけではなく、その後も尋常じゃなく体が震えている。そこまでふるえてどうしたのだろう、と真一は思った。


交差点の最初へ 交差点 3 交差点 5 交差点の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前