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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<槙惣介>-8

―――そんないきさつなど知る由もなく、七香は落胆の意を露にした。
肩肘を突き、画面の諏訪を眺めながらため息をつく。

―――と同時に


「オバちゃんたら…なんでこの人を指名してくれなかったんだろ。
この人が来てくれてたら…こんな無駄な時間過ごさず済んだのに…」



―――――言ってしまった瞬間、七香は自分の口を塞いだ。


無駄……


「あ…ごめんなさい。あなたに不満があるわけじゃ…」
「…いいんですよ。お気持ちはわかりますので…」

七香の顔に焦りと後悔が滲み出る。
惣介は七香が後悔していることに気づき、なんとか気持ちを楽にしてあげようと
できるだけ自然に微笑むよう努めた。

「無神経よね。…本当にごめんなさい…」
「謝らないで下さい。気にしてませんので…」
「誤解しないで…あなたを否定したわけじゃないのよ…!」
「わかっております。私なら大丈夫ですので…」


「でも……そんな顔させてしまった…」

惣介の辛く、悲しそうな笑顔に、七香は思わず涙をこぼした。



――――――――――――――――



「少しは落ち着かれましたか?」

紅茶の優しい香りと、惣介の優しい声。
涙は止まったが、気持ちが浮上することはなかった。

私が彼を傷つけたのに…どうして私が慰められてるのよ…。

今まで人と関わることが嫌いで、それを避けてきた七香だったが、
それが故に人を思いやることすらできなくなっていたのかと思うと、心から自分を恥じた。

勉強ができても…人の心を簡単に傷つけてしまうなんて、医者など目指すべきじゃないのかも…。


「……本当に、ごめんなさい」
「もう何度も聞きましたよ?そんなに謝らないで下さい」
「でも………」

どうしても自責の念が拭いきれなくて、七香はティーカップを手にしたまま俯いた。

「ここへ来て……お嬢様の笑ったお顔をまだ見ていません。怒った顔も、泣いた顔も魅力的ですが、
私は笑った顔のほうがもっと魅力的だと思います」

そんなこと……と思いつつも、言われた言葉は心に残った。

「…会った瞬間から怒鳴っていたもんね。つくづく…嫌な女だなー…私って」
「そんなことありませんよ。お嬢様のご意思ではなかったのですから、仕方ありません」

今は優しく微笑んでいるけど、さっきの悲しそうな顔を思い出すと…胸が痛い…。


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