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LUCA
【その他 官能小説】

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LUCA-2

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 流歌について、僕は多くを知らない。たったの二時間、合同コンパという席で過ごしただけ。言葉を交わしたのも、ほんの数回。でも、たったそれだけの時間で、僕は彼女を愛することが出来た。

 出会いから何日も彼女のことばかりを考えた。仕事で二回重大なミスをした。せめて夢の中で彼女に会いたくて、朝寝坊をしたこともあった。彼女の事を想いながら数え切れないほどのマスターベーションをした。何人かいたセックスフレンドとの関係も切った。もう、僕は彼女でなければならなかった。

 やがて、僕は彼女にもう一度会いたいと強く思った。そして、合同コンパの日、一緒に行った数人の男友達に連絡を取ったときには、もう遅かった。

「ああ、ルカちゃん? もうオサムくんと付き合ってるよ。つーか、あの日のうちにホテル行ったらしいしなぁ。いーよなぁ。お前は? なんかあった? ねーの? いや、俺も全然駄目。っつーかさ、俺狙ってた子なんてさ、彼氏いるからごめんねって、じゃあ最初から来るんじゃねーよって話でさ」



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「そういえば、お前、流歌の事気に入ってたんだろ? ははっ。だからか? 俺があいつと付き合ったから、それで俺を殺そうって訳か?」

 しばらく声を失っていた彼は、突然笑い声を上げたかと思えば、そんな事を言い出した。

「安心しろよ。もう別れたよ」

「知ってる」と僕は言う。「別にそういう理由で君を殺そうっていうんじゃない。もっと、目的は別のところにある。僕は昔、七歳か八歳くらいのとき、トンボの羽を千切っては、猫に食べさせたことがある。猫はいくらでもトンボを食べるんだ。だから僕は、どんどんトンボの羽を千切った。トンボなんてのはさ、羽がなくなってしまえば、蟻よりも弱い生き物だよ。上手く歩けないし、動きも遅い。僕に羽をもがれ、猫に食われる。君に聞きたいんだが、この話、どう思う? 誰が悪い?」

「そりゃ、お前が悪いだろ」

「君はそんな事は思っていない」

「普通に思ってっから。てかさ、お前、ちょっと頭おかしいんじゃねえ? 猫にトンボ食わせるとかよ」

「まあいい」と僕は彼の意見を聞くことを諦める。「いいか? 君はこう思っているはずだ。弱者が悪いと。弱者である事が罪なのだと」

「何が言いたい?」

「君は、かつては僕だった。でも、今はトンボだ」僕は一つ息を吐く。しばらく、沈黙が続く。僕はあのことを彼に喋ろうかどうかを迷っている。僕は思い出す。流歌のこと。そうするとき、僕は頭痛にさいなまれる。軽い吐き気も覚える。「彼女に、会ったよ」僕は声を絞り出す。

「彼女? ルカにか? あいつは今どうしてるんだ?」

 僕は頭痛を晴らすように、頭を二、三、横に振る。「死んだよ」と、声を絞り出す。


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