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『お宝は永久に眠る』
【ファンタジー 官能小説】

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『お宝は永久に眠る2』-5

「いらっしゃい。何にいたしますか?」
 未成年であるセルビーを外に待たせ、喧騒と活気が溢れる酒場のカウンター席に座った二人に、マスターらしき熟年の男が注文を聞きにくる。
「そうだな。この、コージュスープというのを貰おうか。聞いたことのないものだ」
 メニューを開いたメニールがすぐさま注文する。
 別に情報だけを聞き出せば良かったのだが、賭けの約束もあったのでついでに注文したのだろう。
 しばらく待つと、メニールの目の前に見覚えのある飲み物が出される。
 通常の液体よりも粘度の高い黄色いスープに、穀物や野菜とされる黄色い粒が浮いた飲み物。
「これは……俗に言うコーンスープじゃないか?」
「コージュというのは、この地域でいうコーンのことなんですよ。この地域の人々は、『ン』が語尾に付くと『ジュ』や『ヌ』と訛るんです。他のも、幾らか訛りのある言葉があります」
 メニールの疑問にマスターが答える。
 どうやら、マスターはこの街に住み着いて長いらしい。
「曽祖父の代からやっていますので、少しは現地語も話せますよ」
 マスターが恥ずかしげに付け加えた。
「この辺りには詳しいようだね。それじゃあ聞くが、『サボティージュの揺り籠』について教えて貰えるかな?」
 と、メニールが問いかけた瞬間、マスターの表情が強張る。
「…………」
 周囲からねめつけるような視線を感じ、二人も腰に手を宛がう。
「お客さんもご同類でしたか……。申し訳ありませんが、私の口からは何とも……」
 口を噤んでしまうマスターから、周囲の視線が離れる。
 保身を第一に置いたのか、他の団体がライバルを作るまいと緘口令を敷いたのか。
「そうか、それは残念だ。それにしても、このスープはなかなか美味いじゃないか。御代りを貰いたいのだが、こっちは領収書を貰っても良いかな? 決して高くはないが、十分な値段だと思う」
 ここで聞き出せなければ、どこへ行っても聞ける情報ではないだろう。
 諦めるように、メニールは食事を優先しようとする。
 いや、メニールは諦めてなどいない。それを証明するように、差し出したスープの器の下に幾らかのジュリー紙幣が挟まれていた。
 経費を賄賂に使うとは、ジェイドも呆れるほどに世渡りが上手い。欲張らなければ、長生きするタイプの人間である。
「……分かりました、直ぐに領収書をお作りします」
 器と紙幣を受け取ったマスターが、カウンターの陰にしゃがみ込んで『領収書』を作っている。
「こんなところでは作物が育たないと思っていらっしゃるでしょうが、決して緑のない不毛の台地ではないのですよ。街から離れた一定の地域だけ、なぜか植物の育つ場所があるんです」
 唐突に、カウンター裏からマスターの世間話が聞こえてくる。
「そこの地主で、曽祖父の友人から作物を分けてもらってこうしてお店をやっています。もし旅の途中でお困りになったら尋ねてみると良いでしょう。どうぞ、領収書です」
 メニールの手に、マスターの手描きの『領収書』が渡される。
 一瞥するに、今話した地域への道順を記した地図と、マスターのサインか何かだ。


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