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『お宝は永久に眠る』
【ファンタジー 官能小説】

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『お宝は永久に眠る2』-3

「その心は?」
「他国軍の方が人数も武器も勝っている。どちらが勝つか、なんて明白だろ?」
「なるほど。ジェイド、君はもう少し周囲の戦況に気を配った方が良い。まさか、小等部の通信簿に『注意力散漫です』などと書かれていた口か? 私は原住民族軍に掛けよう」
「…………」
 メニールの嘲りにジェイドは微かに憤りを感じて閉口する。
 何の根拠があってそう言うのかは分からない。ただ、それを知るのは、メニールが徐に指差した他国軍の背後に視線を投げた時だ。
 風の所為か、砂が大きく波打って見える。いや、多少の風では風紋を作るだけで、砂が蠢くことなどない。
「まさか……」
 ジェイドは蠢く砂の正体に気付いた。
「そのまさか、だよ。あれは原住民族軍の伏兵だ。他国軍は、原住民族特有の砂漠迷彩“デューンカモ”に気付かず挟撃されて戦況を崩される」
 メニールが得意気に説明している間に、他国軍は原住民族軍の挟撃にあってクモの子を散らすようにして敗走してゆく。
「…………」
 先刻の嘲りに反論の余地などなく、図星だからこそ幼い頃から変わらない自分の性格に呆れる。
 見事に賭けで負け、一杯奢らなくてはならなくなった。
 ここへ来る前に幾らかの資金は貰っているが、出所はジェイドのポケットマネーになるだろう。とある日のメニールの酒豪ぶりを思い出し、一杯で良かった、と心の中で安堵する。
「さて、そろそろ行こう。旅人までは襲わないだろうが、下手に目をつけられたくはない」
 自分から言い出しておきながら、メニールは我先へとジェイドを追い抜かしてしまう。
 その足取りは、先刻までの不機嫌さが消えてステップ調になっている気がした。

 抗争跡から歩くこと一時間、二人はようやくクルウェへとたどり着く。
 [クリーチャー]の侵入を防ぐ防壁や見張り台を潜り、人々が行き交う往来を進む。原住民族や他国人、様々な人種が右に左に後ろに前に、と通り過ぎる。
 発展途上とは聞きながらも思ったより活気に溢れているが、それはクリスティナ城下のような平和な賑わいとは異なる。
 過ぎ行く皆が皆、何かを警戒しているように視線を巡らせる。
 誰を信じ、誰が危険かを品定めする、疑心と暗鬼が往来を包み込むのだ。それに争いとは関係のない民が含まれている今、一歩間違えれば民族を超えた国家間の争いにも発展しかねない。
 果たして、何が彼らをそうさせている。
「『サボティージュの揺り籠』とは、それほどの物なのか……?」
 初めて訪れた旅人の也をした自分達にも向けられる疑心や疑念の眼差しに、疲弊したようにメニールは誰ともなく問う。
 これまでにも、幾度かこれに近い光景を目にしてきた。誰も知りえぬ財宝を巡り、トレジャーハンターに限らず多くの人間が血を流した。
 そんな殺伐とした世界の中で、輝きを放つ財宝。
 それはまるで、自分の見下ろす砂の大地が人々の血を吸うのと同様に、多くの血を吸って輝きを増しているかのように。もしかしたら、そうした財宝の方が争う人々の心より穢れているのではないだろうか。
「嫌だね、欲に目が眩んだ人間ってのは」
 自分はそうでないと言いたいのか、ジェイドが呆れ口調で呟く。


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