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白日夢(はくじつむ)
【鬼畜 官能小説】

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白日夢・一 第二章: みどり編-2

俺はテレビが嫌いだ。特に深夜のお色気番組などは、見ていて反吐が出る。実の所、俺のテレビ嫌いは麗子が画面の中にいるからだ。

今の麗子は嫌だ。麗子を見たくない訳ではない。今でも、逢いたいという気持ちは強い。
何故って?今の麗子が、本当の麗子じゃないからだ。セクシーさだけが強調されている麗子は、麗子じゃない。

俺だけが知っている本当の麗子は、もっと光り輝く太陽のような女だ。内側から滲み出る妖艶さを、誰も気付かないのか!凛とした気品に気付かないのか!男を迷わせる所作に気付かないのか!

それに比べて・・。まあ確かに、肌のきめ細かさは若い娘ならでは、だ。しかし、不摂生な生活を送る女のそれは、だめだ。やはり、肌が荒れている。
それに、乳首の桜色は望むべくもない。花園もドドメ色だ。もっとも、俺が相手したホステスだけかもしれないから、確かな事は言えないが。

とは言っても、若い女のエキスは良いものだ。匂いからしてが、違う。年増になればなる程、すえた匂いがする。まっ、俺にしてからが親父臭が漂っているだろうから、お互い様か。

すえた匂い、言い換えれば母親の匂いかもしれん。子供の頃にはその匂いを嗅ぐだけで、何故かしら安心したものだ。小学五年か六年だったと思うんだが、こんな話を聞いた。

「夜中に、歯が痛み出してさ、参っちゃった。俺んち二人とも夜の商売なんで、姉貴は遊び歩いてるし。俺一人なんだ。でさ、仕方ないから歯磨きしちゃった。痛いところを念入りにゴシゴシって。少しは紛れるんだけど、痛いのには違いないし。お袋が帰ってきたら、ワーワー泣いちゃった。布団の中でグッと抱きしめてもらったら、不思議なんだ。痛みが取れてきた。ククク、お袋の匂いって、薬なのかなぁ?」

お袋かぁ・・。音信不通になってから、もう何年になるか。ま、勝手に生きてるだろうさ。どうしてなのか、あの当時はまるでわからないことだったが、家族間でえこひいきと言う言い方も変だが、ひどいものだった。

「母さん、ごめん。今回のテスト、90点だったょ。」
「おやおや、そんなに難しかったのかい?」
俺が90点を取ると
「へぇ!優しかったんだねぇ。」と、ひと言。

兄が生徒会長に選ばれた折には、
「そりゃ良かったねぇ。内申点が上がるょ、きっと。」と、喜んだ。
俺が作文で花丸をもらい、嬉々として母親に見せた。しかしチラリと一瞥しただけで、
「そんなもの、一文にもならない!」とそっぽをむく。

しかしそんな自慢の息子が、大学受験に失敗した。温室育ちの兄には耐えられない屈辱で、発表の夜に自殺してしまった。母親の嘆きようは凄まじく、三日三晩泣き通しだった。
しかし俺は、まるで悲しくなかった。それ以上に、母親に対して
“ザマァミロ!”と、心の中で呟いた。

進路問題での三者面談、母親を呼ばなかった。聞くまでもない、と考えた。
「行けないょ!」と言われるのが恐かったのかもなぁ。
「母子家庭なので、仕事を休めません。」と、嘘を吐いた。そして教師の勧めも聞かず、就職を選んだ。せめてもと定時制高校に入ることを約束させられた。とに角一刻も早く、母親から独立したかった。逃れたかった。

「ほんとに先生は苦労されたんだょ。」
しみじみと言う田坂に、話を合わせようと俺の隣に居た女が日和ってきた。
「ひどいお母さんねぇ、こんな良い子を。ヨシヨシ。」

「なに!母親の悪口を言う奴は、許さんぞ!世の中広しと言えども、母親の悪口が許されるのは、俺だけだぞ!母親が俺を嫌うのは、いや憎むのはなぁ。田坂ょ。辛いぞ、俺は。父親が死んだのは、俺のせいなんだ。俺が熱を出したが為に、救急車を誘導したが為に、父親は死んだんだょ。雪の夜でなぁ、雪に隠れた縁石に足を滑らせたんだょ。頭を強く打って、その上救急車に轢かれてなぁ。死んじまったんだょ。」

おいおい泣いてしまった。中々止まらない涙には、俺自身がまったく閉口した。


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