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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<津上翔太朗>-1

「demande」は、あなた専用の執事をレンタルすることができるサイト―――




「今回も年上だって?」

シュッというシルクの音と、よく通る惣介の声が翔太朗の頭上から響いた。
慣れないネクタイを、完璧に締めるために何度も結びなおす惣介。
翔太朗の頭1個分背が高いから、いつも二人でひとつの鏡を使う。

「うん。年下からのご指名はここ半年くらいないよ」

「まぁ…翔より下っつったら限定されるけどな……あーっ!何度やっても曲がる!!」

イライラしながらの手作業は、より物事を悪化させるだけなのに…。
翔太朗は仕方ないなぁ、と思いつつも惣介のネクタイに手をかけた。

「僕より年上なんだからしっかりしてよ。…ホラ、できた」
「でもお前のほうが先輩♪時間ないから先行くわ。サンキュ」

惣介は慌しくドレッサールームを出ると、本日ご指名のお嬢様のもとへ急いだ。

僕もそろそろ出るかな。
今日のお嬢様は先週お使えした朱美さんからの紹介。
…朱美さんは痛かったなぁ…。あれじゃお嬢様というより女王様だよ。
似たもの同士…だったらイヤだなぁ…。

翔太朗が「demande」に入ったのは3年前。
執事としては少し背が足りなかったものの、顔の小ささに不釣合いなほどの
くりんとした目や、少年のようなあどけない声、笑った顔はまるで子犬のよう。
そんな「可愛い」理由から、指名の数は着実に伸びていき、3年後の現在も変わらず。
チーフが見込んだ通りではあったが、「執事」という役割からは少し離れていってるようだった。
翔太朗を指名するのは決まって年上で、お使えするというより…
使わされてるといったほうが正しいような気もした。

――役割としてはペットに近いかな。

そんなことを考えながら、翔太朗は<井芹樹里>のもとへと向かうことにした。
「demande」には「執事専用車」というものがある。
執事の送り迎えのためだけに用意された運転手付きの専用車だ。
執事は運転手に、本日のお客様の名前だけを言い、車を出してもらう。

「井芹樹里様のところへ」
「かしこまりました」

「…そういえば惣介は?」
「本日は御自分のお車で向われました」
「そっか」

運転手は「初老」と言っても過言ではないくらい年上なのに、
それを文字通り足に使ってるというのが慣れなかった。
それでもニコニコと礼儀正しく接する運転手を見て、プロなんだということを認識させられる。
もはや年齢など関係ないのだ。自分の役割をこなすことで認められる。
初老の紳士はいつでも姿勢がよく、翔太朗はいつも――この人こそ執事だよなぁと思っていた。


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