投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最初へ 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 7 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 9 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最後へ

電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-8

「ごめんね、私こういう言い方しか出来ないからアレなんだけど」
 倉本先輩は耳たぶをいじり、少しだけばつが悪そうに、
「あなたのお姉さん、スゴく変わってるけど、頭の回転が早くて、感性が鋭い人から。私は会ったことのないタイプだから、つい好奇心が出てくるのよ」
 取り繕った様子はなく、本心から言っているようだが、
「最初は精神を病んでるか、知的障害を持ってるのかと思ったけどね」
 取り繕わなさすぎて、あまりに直接的な物言いのため、周りから辛辣とかキツいと評される真琴でもヒドい言いようだと思った。
 それと同時に、ある違和感。
「こんな状況で、随分余裕があるんですね」
 まさかなぁと思いつつ、ペンジュラムを握り締める。
「まあ、この状況を作ったのは私だから」
「……はい?」
 まさかが的中した。意外にあっさり自白してくれたのは、手間が省けて悪くはないが。
「えーと、」
 敵は目の前の二年生、倉本先輩である。
 さて、ミステリーなら犯人が自白したなら話は終わりなのだが。
 巫女の仕事は、ここからが本番なのだ。
「……ちょっと美由貴……」
「つまりね、日本は今二極化してるわけでしょ? 大富豪または大貧民。美由貴ねぇ、大貧民好きなんだよねー、でも革命嫌い一番嫌いだからナポレオン大っ嫌いけどナポリタンは好きー麺は好きースキー好きーでもソリは反り合わないからやっぱり冬はコタツでキャンプファイヤーが一番……」
 ……困った。未だに美由貴は消火器に向かって楽しげに会話(?)をしている。いい加減引き離そうか頭殴るか首絞めるかどれかをした方がいいように思った時だった。
 唐突に美由貴が立ち上がり、無表情に、というか空虚な感じにこちらにふらふら歩いてきて、真琴にもたれかかろうと、
「いやアタシ杖じゃないから」
 さらりと避ける。美由貴はそのままふらっと倒れ、ガコン!!と頭から出してはいけないような音が美由貴の頭と舞台の段差から響いた。
「あ!」
「大丈夫ですか!?」
 アキと仲町先輩が慌てて駆けよるが、
「大丈夫です。コレ、丈夫に出来てますから」
 人間じゃないし、と心の中で付け加えておく。今も首の角度がおかしいのだが、美由貴は異様に体が柔らかいので全然大丈夫。その証拠にほら、でんぐり返しで真琴の足元まで戻ってきたじゃないか。
 しかし真琴の足元で三角座りをする天使の顔は、この世に絶望した引きこもりのように暗く澱んでいた。
「……オギノシキはキャンプファイヤー嫌いだって」
「ネーミングセンス最悪。消火器はそりゃ嫌いだろうね。で、話進めさせていただいていいですか美由貴さん?」
 真琴の言葉に何故か、唐突にとろんと満面の、クスリでラリったような笑顔になる美由貴。頭をスリスリと真琴に預け、
「うぅ、なんか真琴がおっかないよ〜♪」
「笑いながら顔をなすりつけないでキモイ」
「えーんヒドい〜マコちゃんヒドい〜♪……あ、じゃあ自己紹介と説明お願いしまぁす☆」
 躁鬱気味にテンションが早変わりする美由貴と冷たくツッコむ真琴の落差にポカーンと置いてきぼりの三人へのいきなりの振りに、まずアキはついてこれず倉本先輩は呆れ顔、なんとか答えたのは仲町先輩だった。
「えっと、初めましてではないんですが……どこから説明すれば?」
「始めの方から始めて、終わりにきたら止めればいいんです〜ふっふー♪」
 なんかそれっぽいことを言っているが、確実に誰に対しての説明なのか理解してないのが微妙に腹立つ。
 とはいえ真琴もこの三人からまだろくに話を聞けていない。チラッと『犯人』の顔を見ると、余裕綽々で肩をすくめた。なんというか、開き直りにしても余裕たっぷりなのが気になるが、とにかく話を聞かないと始まらないだろう。
 しかし困った。さすがに目の前に張本人がいては話しづらい。


電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最初へ 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 7 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 9 電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前