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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿
【ファンタジー その他小説】

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電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―文化祭編―-7

「誰かいますかぁ! 高等部一年の小林真琴です!」
 いることは分かっているが、敵意がないことのアピールのために大声を張り上げる。
 体育館の中は、止まった人間がかなりいた。確かこの時間は演劇が始まる前の筈。ということは、観客なのだろう。
 美由貴は相変わらず消火器に向かって話しかけている。どう見ても社会不適応な不審人物にしか見えないが、この状況では仕方ない……のか? この天使のアブない行動が本当に全て仕方ないことなのか?
 ――思考を拒否し、今は目の前のことに集中する。
 確かに動く気配を感じる。予期しない呼びかけに戸惑っていたようだが、名前を明かしたのが効を奏したのか、三人の女子生徒が舞台袖から出てきた。
「真琴?」
「アキ!」
 活発そうな、それでいて人懐っこい顔は、同じクラスメイトだった。
「アキちゃん、知ってる人?」
 上靴のラインの色から、高等部二年生だとわかった。年齢の割に大人びた、少し冷めた感じの人。それが真琴の印象だった。なんか、どこかで見たような気がする。
「……あ、クラスメイトなんです。ほら、神社の」
 こちらは知らなくても、向こうはこちらを知っているようだった。軽く頭を下げる。
 もう一人、こちらは高等部三年生だ。優しさと芯の強さを持ち合わせた、柔らかい雰囲気は、やはりどこかで見たことがある。ようやく真琴は思い当たった。
「あ、さっき、映画で」
 そうだ。映画の役者の中に、この三人は出ていたのだった。
 だが、映画の中とは違って、非常にギスギスした感じがする。一般人がこの状況で取り乱すなというのは無茶かもしれないが、どうもそれとは違う気がする。
 アキ、真琴と教室で同じグループの友人は、真琴と会えて如何にもホッとしたように。
「よかった、真琴に会えて……いきなりこんなことになって、アキ訳わかんなくて」
 少し鼻声だった。気付かない、振りをした。
「映画、見てくれたんだ。どうだった?」
「うーん。途中までだけど、アキに演技の才能がないことはわかった」
「ひ、ひどいよ〜」
「嘘だってー。すごいなアキって」
 いつもよりオーバーなリアクションは、或いは現実逃避かもしれないが、真琴は気付かない振りをする。それぐらいの思慮は真琴にだってある。
「悪いけど」
 二年生が風貌通りの冷めた口調で会話に割って入ってきた。
「あなた、神社の人よね? 後ろの人は、お姉さん?」
 美由貴はまだ消火器に向かって会話(?)している。三年生は目を逸らし、アキは可哀想な人を見る目で見つめ、そしてこの二年生は、からかうように。三者三様の反応は、それぞれが不快だった。
「全力で否定したいところですが、残念ながらそうなっています」
 その答えに二年生はクスッと笑う。二年生の何かに触れたようだ。
「私は二年の倉本。こっちは三年生の仲町先輩」
「……お姉さんには、お世話になりました」
 仲町という先輩の方が頭を下げる。どちらかと言わずにむしろ美由貴の方が世話になってるような気がするのだが、とりあえず黙って頷いておいた。
 仲町先輩は、混乱しているのか、緊張か警戒からか、あまり話そうとはしてくれない。代わりに倉本先輩は、興味深そうな目で美由貴を見ながら、
「あなたのお姉さん、どうして消火器に話しかけてるの?」
 どこか面白がるようなからかうような、そんな声音だった。しかし、不思議と嫌みな感じはしない。しかし、それでも不愉快だ。
「全くもって理解の埒外で、先輩も気にするとああなりますよ」
「ちょっと、倉本先輩」
 真琴の声に憮然としたものが混じったのを感じとったか、アキが割ってはいる。


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