投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

じゃんけん大会
【サイコ その他小説】

じゃんけん大会の最初へ じゃんけん大会 2 じゃんけん大会 4 じゃんけん大会の最後へ

じゃんけん大会-3

『やるか。』
一言呟いてから、先ほどと同じようにじゃんけんをした。結果は、信幸が“パー”で、太樹が“チョキ”だった。
出した瞬間、一瞬遅出しのような気もしたが、そんな言い訳が通じるわけないと思い、すぐに諦めた。しかし、その思いを踏みにじるように太樹は言った。
『俺がさっきから勝ってる理由、教えてやろうか?』
『!?』
『俺、さっきからなぁ、わかるかわからないかくらいで“遅出し”してんだよ。死んじまう前に言っといてやろうと思ってよ。じゃあな、虫けらよ。』
“ガチャ………ウィーン”と音がして、暗闇へと落ちていった。

信幸はまだ状況が飲み込めていなかった。自分が落ちると思いこんでいた矢先に何故太樹が落ちたのか。しかし、ゆっくり考えればその答えは自ずと出てきた。
おそらく、あいつがボソッと俺に言ったことが、誰かに聞こえていたのだろう。だから、反則をした太樹の方を落としたのだろうと思う。あいつもつくづく運のない奴だな、と小さく笑った。
ふと気付けば、いつの間にか俺と慶太の二人だけだった。他には誰も残っておらず、しんとして張りつめた空気が漂っていた。
慶太はゆっくりとこちらを振り返り、悲しそうな目をした。しかし、やらければいけない。十秒以内に、絶対に勝ってやる。信幸は思いっきり息を吸い込み、そして吐き出した。
『じゃん……けん………。』
二人は声をそろえて言った。だが、この後の“ぽん”なかなか出てこないで、妙に長い時間が続いていた。いつまでもこの時間が続いて欲しかった。おそらく、その気持ちは慶太も同じだろう。
無論俺は死にたくない。だが、慶太にも死んでほしくない。しかし、やらなければ自分が死ぬ。だからやるしかない。
十秒という時間は、あまりに短すぎた。死を覚悟する時間、友との別れを覚悟する時間。そのどちらにしても短すぎる。
『ぽん!!』
この瞬間、もう死ぬんだな、と決意を固めた。

五本の指全てが伸びきり、力強く開ききっている慶太の手はゆっくりと“グー”に変わった。
それに比べ、指が二本だけ伸びている信幸の手は、そのままゆっくりとしたに下がり、だらんとした“パー”へと変わっていった。
正直、そんな予感はしていた。この四十人のクラスの中で、最後まで残れるなんて思っていなかった。むしろ、ここまで来たので精一杯の奇跡だろう。
『慶太……今まで楽しかったなぁ。じゃあ、もういくわ。』
疲れ切った笑顔でそう言った。下から穴が出現し、落ちていくんだと思っていた。しかし、落ちるかと思ったその時、腹に衝撃と激痛が走る。
そのまま後ろに倒れ込み、見上げたときにはすでに慶太は落ちていった。何も言葉を残さずに。
『慶太ーっ!!』
叫んだのが遅すぎたか。すぐさま穴は閉じ、残ったのは俺一人となった。
『見事勝ち残った田中君に、次のステージへと進んでもらいます。』
信幸は我慢の限界だった。
気付いたときには先生めがけて突っ込んでいた。その瞬間、発砲音と共に信幸はその場に崩れ落ちた。
膝をつき、完全に死んだにもかかわらず、次は連射銃で何発も何発も信幸の体に撃ち込んだ。
『止めろっ!!いつまでやってんだ!!!!!』
先生は興奮し、銃をその男に向けた。男はたちまち諦めたが、特にビビっている様子もなかった。
先生も銃をおろし、そのまま何も言わずに立ち去った。


じゃんけん大会の最初へ じゃんけん大会 2 じゃんけん大会 4 じゃんけん大会の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前