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じゃんけん大会
【サイコ その他小説】

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じゃんけん大会-2

『俺とじゃんけんしろよ。』
満面の笑みで寛太は言った。そしてその瞬間から、一斉にみんながパートナー、つまり対戦相手を決定し始めた。
『いくぞ!!』
『ったく。』
こっちの意見も聞かずに勢いよくだした寛太の“チョキ”を、俺は見事に“グー”でうち勝った。その瞬間、心の中の何かが弾けた気がした。
『おっしゃああああああああ!!!!!!』
渾身の力を込めてガッツポーズを決めた信幸の目の前には、呆然と立ちつくした寛太がいた。
『くそっ、五十万がぁぁー!!』
頭をめちゃくちゃに掻き回しながら座り込んだ。そして、もう一度立ち上がりすがってきた。
『頼む、もし勝ったら十万だけくれ!いや、なんなら一万だけでも良い!!』
そこまでして金が欲しいのか、と少し引いた。
『みんなじゃんけんしましたかー?負けた人、勝った人、それぞれ決定しましたねー?』
先生が確認をとっていた。しかし、勝ったものは勝ったもので喜びに満ちあふれた顔でガッツポーズをとっており、負けたものは負けたもので文句を吐き捨てながらそこら中のものを蹴ったりしている。こんなんで聞こえるわけがなかった。しかし、次の先生の言葉は誰の耳にも届いたことだろう。
『じゃあ、負けた人は今から落ちてもらいまーーーーーす!!』
その場はしんと静まりかえり、全員が先生を見つめていた。その長いようで短い時間の間に、じゃんけんに負けたものの足下には一つの小さな穴が現れ、敗者は全員が奈落の底へと落ちていった。
勝者も一歩も動けぬ状態で、落ちた後にその穴はまた再び元に戻った。
何だったんだ今のは、と誰もが思ったろう。なんせ、一瞬の出来事で何が何やら分からない状況だった。そんな中、先生は今まで聞いたことのないようなドスの利いた声でいった。
『何してんだ、早くやれ。十秒以内にじゃんけんをしなかったものは、穴に落ちるぞ。』
その言葉とほぼ同時くらいに、ドア、窓の両方に頑丈そうなシャッターが降りた。
『ここからは一歩も逃げられんぞ。もちろん、逃げようとしたもの、叫んだりしたものなどは、“ゲーム”の進行の妨げになるので即落とします。』
『くそったれが。』
『ほら、早くしないともう五秒経っちゃいましたよ。』
いくら嫌でもやらなければいけない。そんな使命感にかられ、信幸は英義を対戦相手に選んだ。
『すまん、オマエのこと嫌いなわけじゃないんだが……。』
『いや、いいんだよ、いずれやらなきゃならないし。』
二人は大きく深呼吸をし、自分たちの右側に思い切り振りかぶった。
『じゃん、けん、ぽぉぉぉん!!!』
の合図と共に信幸は“チョキ”を、英義も“チョキ”を出し、お互いに心臓が張り裂けそうなのを感じ取っていた。
しかし、ゆったりしている暇もなくすぐさま英義が切り返してきた。
『いくぞ。じゃん、けん、ぽん!』
勢いよく出した右手は確実に勝敗を分けていた。
『っしゃああああああ!!!!!!』
『ノブ……じゃあな。』
“ガチャ………ウィーン”と音がして、英義は真っ暗闇へと突き落とされた。
『ゴメンな……。』
胸のどこかに罪悪感が残っているのを感じ取った信幸は、それをどうにかしてぶつけたかった。しかし、やはりここにもそんな時間はない。
すぐにあたりを見渡すと、まだ慶太が残っているのがわかった。よかった、まだ無事か、と思ったと同時にどうせ最後に残るのはラストの一人だけだと改めて痛感した。
『信幸ー、俺はオマエには負ける気がしねぇんだよ。もちろん、生き残るのも俺で、五十万を手にするのも俺なんだけどさ。』
微妙ににやつきながら、不良グループのリーダーの太樹が話しかけてきた。


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