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未完成恋愛シンドローム
【同性愛♂ 官能小説】

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未完成恋愛シンドローム - 白昼夢 --8

偉かったね、と、女の人が言う。首を横に振る。
別に偉くなんかない。
正直、本気で怖かった。
ただ、泣かなかった。
何回も涙が出そうになったけど、泣かなかった。
そこだけは頑張ったと思う。
そう、自分で言った。
男の人は微笑み、オレの頭を撫でた。
微かに苦さにも似たなにかが、走った。
それがなんなのか、自分でも判らなかったけど、強くなりたいと思った。
ただ、そう思った。

・・・・・・。

予鈴が鳴った。
目を醒ます。
時計を見る。
大体30分くらいは寝てたらしい。
さっきから、無駄に昔の事を思い出してる気がする。
まだ授業が始まるまでは時間があるので、トイレに立つ。
廊下。他のクラスの奴らも教室に入って行く。
その中を歩いて行く。
男子トイレ。昼休み明けだからか、順番が出来ていた。
一番後ろに並ぶ。用を足す。
オレが最後だったらしく、手を洗う時には誰も残っていなかった。
ふと、鏡に映った自分を見る。
カイトとは左右逆にした、完全に瞳が隠れるアシメの髪型。
手で髪を掻き上げる。
「・・」
消えない、傷跡がある。
眉毛のん端っこあたりに残った傷。
耳の下に筋のように残った傷。
「・・・」
髪を上げたままもう片方の瞳を閉じ、普段隠している方の瞳だけで見る。
「・・・・やっぱダメか」
傷のせいなのか、他の要因なのか。あれから半年くらい経ったある日、いきなりほとんど見えなくなった。
なんともない方の瞳は裸眼でも2.0近くあるのに、大体0.1〜2くらいしかない。


「・・・・」
このまま鏡とにらめっこしていてもしょうがないので、ハンカチで手を拭き、教室に戻る。
授業前。静かな廊下を歩いて行く。
と、目の前に無駄にタッパのある制服姿が見えた。
「コタロー」
呼びかける。なぜか少し間を置いてからコタローが後ろに振り向いた。
「なんや、イヴか」
「・・・なんか腹立つな。誰やと思ってん」
「いや」
「・・?」
なんだ?
「ってゆーか」
「あ?」
並んで歩いていると、ふとあることに気付く。
「今の今まで呼び出されてたん?あんた」
いくらなんでも遅くないか?
「あー、うん」
よく判らない返事が返ってくる。
「・・・?」
歩きながら視線をコタローの方に向ける。
「・・・・」
気付いているのかいないのか。視線を動かさずに歩いているコタロー。
「なんかあったん?」
脚が止まる。
「なにが?」
「いや、・・・」
言い淀み
「なんとなく」
「別になんもないで」
・・・。
「・・ま、ええけど」
そういって歩き出す。一拍遅れてコタローも付いてくる。
―なんやねん。
「・・お前ら、2人して俺の授業遅刻とか、大概にせぇよ」
『すんません』
ドアを開けた先には、既に来ていた教科担任の鬼の顔があった。

・・・・・。


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