投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Stealth
【アクション その他小説】

Stealthの最初へ Stealth 28 Stealth 30 Stealthの最後へ

StealthB-6

その他には、鑑識で得たデータが資料として添えられていた。

「手がかりになるモノは無しか…」
「よほど用意周到なんですねえ」

 佐倉は訝かしげな顔を宮内に向ける。

「これだけ用意周到なヤツらが、ビルの侵入に関してだけ行き当たりで行うだろうか?」
「確かにそうですが、ずっと張っていた可能性もありますよ?」
「出て来るかも分からんのにか?」

 佐倉の意見に、宮内は何も言えずに俯いた。

「ヤツらはあの時刻に、今田が現れるのを知っていた。いや、現れるように仕向けたんだ…」

 佐倉は確信を持って自論を展開する。

「…しかし、それを証明するとなると大変ですね」
「もう1度、全ての資料を洗い直すぞ。ビデオをセットしろ」

 課の同僚がひとり、またひとりと帰宅していく中、すっかり薄暗くなったオフィスには2人の男だけが残っていた。





 翌日昼。

「はぁ〜、お腹空いた」

 播磨重工ビル1階の清掃員詰所に、掃除婦達が戻って来た。これから昼食の時間だ。
 各人、ロッカーから弁当や水筒を取り出し、銘々のイスを円く並べて腰掛ける。

 美奈もロッカーから弁当を入れた手さげ袋を持って来ると、いつものように広野のとなりに座った。

「いただきま〜す」

 両手を合わせた後、弁当のフタを取って美奈は微笑む。

「嬢ちゃんのは豪勢のだねぇ」

 美奈の弁当を見た広野が感心する。
 おかずは玉子焼きに串に刺したミートボール。きんぴらゴボウとレタスを敷いたプチトマト。ご飯には鮭フレークの掛るほど、手の込んだモノだった。

 美奈は顔を赤らめた。

「ほとんどは冷凍食品や調理済みで売ってるモノです。唯一、作ってるのは玉子焼きだけで、それも母親に作ってもらってるんです」
「なんだい、未だに親に頼ってんのかい?自分の弁当ぐらい自分で作れるようにならなきゃダメじゃないか」

 広野の叱咤に、美奈は肩をすくませ顔をしかめる。

「でもタケさん。ここって朝早くて…」
「何を言ってるんだい。あんた以外は皆、自分でやってるんだよ」

 追い討ちを掛ける広野の言葉に、美奈は“はあ…”と情けない声をあげた。その瞬間、周りの仲間がクスクスと笑った。

「こんにちは…」

 賑やかしい詰所のドアを叩く音。その途端、和やかな表情だった美奈の顔が引きつった。
 周りの仲間もドアを見つめる中、美奈は席を立ってドアを開ける。そこには恭一が伝えた特徴通りの今田郁己が立っていた。

 美奈は戸惑いながら、仲間に聞こえないように小声で訊いた。


Stealthの最初へ Stealth 28 Stealth 30 Stealthの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前