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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(後編)-22

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「一、二の…」

“三!”の合図で、三人はガラスに突進した。嫌な音がして、河野がうずくまる。肩の骨をもろにガラスにぶつけたらしい。

「ちっくしょ…」

「河野、大丈夫か?」

河野は歯を食いしばって立った。誰もが、身体のどこかから血を流している。右肩から血を流せば、今度は左肩で。肩が駄目になったら、拳でと、かれこれ1時間以上も、彼らはこうしてガラスに突進しては脱出を試みていた。しかし、分厚いガラスは割れるどころか、傷一つついていなかった。

「大丈夫だ。ここで死ぬよりマシだよ」

「おまえ、少し休め」

真田がそう言って、河野の肩の血の出ていないところに手を置いた。河野はそれを振り払って、毅然とした顔で言った。

「いや、いい。お前だって野分にあいたいだろ…おれも小夜に会いたい。あって胸を張りたいんだよ」

その言葉に、真田は微笑んだ。

「よし…じゃあもう一回行くぞ…一…」

「しっ!」

茜が真田を制した。緊張が走る。

「誰か来る…」

覚悟を決めるべき時がきたのだろうか。戦いは激化している。黷が“切り札”を使うなら今以上のタイミングはないだろう。

茜は必死に頭を回転させた。澱みの手から逃れて、なんとかあいつのところに行き着く方法はないのか…。このまま、敵に良いように利用されて死ぬのは御免だ。茜は髪をかきあげ、その場にうずくまって考えに考えた。足音が近づく。チャンスは、澱みがこの牢屋を開けた一瞬―。その後を考える時間は無い。

「出ろ」

そいつは言い、茜は顔を上げた。



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害は、父の姿を見た。

あれほど強大で、絶対的な存在に見えたその姿は、今では前ほどの力を持つようには見えない。人間の魂を溜め込み、無限に等しい力を手に入れたにもかかわらず、彼にはその姿が、彼の手を片時も離さなかったあの女よりも強いようには思えなかったのである。

「あなたは、負けるよ」

彼は言った。

平手打ちが飛んでくる。しかし、それでも彼をひるませることは出来なかった。並みの澱みなら、黷が一つ指を鳴らしただけで自らを消滅させることも厭わないというのに。

「吾は滅びぬ」

小さな澱みを見下ろして、黷は言った。

「それを“貴様”に見せ付けるために わざわざこんなものを作って お前を中に封じたのだからな……」

害は、黷が自分に向けて語りかけているのではないことを感じた。いや、そうではない。彼ではなく、彼の中の何かが、語りかけられた言葉を聞き、理解していることを感じたのだ。


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