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『ポッキーとプリッツ』
【青春 恋愛小説】

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『ポッキーとプリッツ』-3

「俺、律子の歌声好きだ。力強くてでも繊細で一本筋が通ってる。ソロ聴きたい。」

貴帆とソロを争っていることを知っているのにそんなことを言うなんて、安宅はずるいサイテーな男だと思う。
それでもその言葉に嬉しさが湧き上がってしまう。

高校に入ってからずっと、辛いことも嬉しいこともわかちあってきた大好きな貴帆。
しかし、

「ちゃんと戦ってみるよ。」

宣言してみた。

「それがいいと思う。」

戦うのは、歌だけじゃないということに気付いているのか、安宅は微笑みながら同意した。

「それじゃあ、またね。」

後ろ手に手を振りながら、安宅を残して屋上を去る。

階段を降りながら、ふと、先ほどの安宅の「ポッキーゲームでもしない?」と唇を突き出している表情が頭に浮かんだ。
ふるふると頭を振って、妄想を追い払う。

“欲しがりません。勝つまでは”

何故か戦時中のスローガンが浮かんできてしまって、自分自身に苦笑いだ。
気持ちを落ち着かせようと鞄からプリッツを取り出す。
まるで煙草。

「いらない。甘さなんて。」

パキン。

とても良い音がした。

でも少ししょっぱい気がした。


〔END〕
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