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『ポッキーとプリッツ』
【青春 恋愛小説】

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『ポッキーとプリッツ』〜ポッキーの憂鬱〜-3

「消えてなくなりたい。」

死ぬ気はなかったが,ちょうど開いていた窓から,身を乗り出してみた。
風が冷たくて,涙が凍らせるかのように頬をさした。

小さく見える人や建物。
ああ。
なんだか死んでもいいかもしれない。
けど,悲しいことに足が震えるんだよなぁ。
どうせ私はここから飛び降りる勇気さえ持ち合わせちゃいないんだよなぁ。

「おい,ふざけるな。」

突然,肩を強くつかまれ,引き戻された。

早瀬だった。
いつの間にか戻ってきていたらしい。

「そんなことするために,この寒い中わざわざ,窓を開けてるんじゃないんだよ!」

鬼のような形相で怒鳴られた。

「だって……」

「だってじゃない。なんでも聞いてやるから。人生相談だってなんだってやってやるから,泣くな,笑え!」

「だって……私の笑顔嫌いなんでしょ。」

私がやっとのことでそれだけ言うと,むっとしたようにそっぽを向いてから早瀬は,強く言い直した。

「じゃあ歌えよ。」

言い終わらないうちに早瀬の右手は私の頭をぽんぽんと2度撫で,その勢いでピアノの蓋が乱暴に開けられた。
伴奏が艶やかに奏でられる。

「歌え。聞かせてやろう。お前の歌声を全校生徒に。」

投げ捨てられるような言葉とは裏腹に,早瀬はニヤリと私に合図した。

「安宅や律子にも。」

挑発的に微笑う。

「お前の歌声が一番だって,お前が一番だって,俺が証明してやる。」

導かれるように涙がひき,のどが開く。



私は窓の外に声を投げ出し始めていた。


〔END〕


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