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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(前編)-23

それなのに、とうの澱みにすらその詳細が伝わっていないのは何故だ?相当の数の澱みが、その現場に居たはずではないのか?尋ねるもの全て、手柄を我が物にしたいが為に出鱈目な事を言う。もし彼らの言っていることが全て事実ならば、飃は30体の澱みが、八条さくらは20体の澱みが、一斉に首を切ったことになる。皆で「せーの」と声を合わせて斬ったとでもいうのか?馬鹿馬鹿しい。この話の信憑性は無いに等しかった。

8月20日まであと15分という時。

小さな影は、父親の部屋から町を眺めては、本陣に戻ってくる中級の澱みに話を聞いた。どいつもこいつも、自分の手柄を立てることしか考えていない。彼はため息をついた。自分はまだ外に出ても良いと命じられていないから、彼はただじっと座って、街を眺めていることしか出来ない。さくらが死んだという話に隠されたなにかを突き止めたいと、父に言っても、外へ出ることだけは許されなかった。それどころか、何故そこまであの小娘を気にかける、と、逆に質問されてしまった。それ以来、父には会っていない。

害。それがこの澱みの名前だ。一番後に作られた、一番新しい澱みとして、同種の間からは羨望と侮蔑の入り混じった目で見られる。

―子供の姿をした澱み。父親の寵愛を一身に受ける澱み。予想外の可能性を秘めた、実験段階の澱み。

お前は切り札だ、と、彼の父親は言った。だから今しばらくここで戦いを見ているのだと。

父親の言うことは絶対だったが、彼にはあまりに知らないことが多すぎた。五月蠅く質問をすると捨てられてしまうのはわかっていたから、父親には質問しなかった。いやな匂いのするあの人間も駄目だ。

だから彼は、父親が居ない間に、同じ部屋にいる人間の女に声をかけた。

「おい。女」

女は振り向かない。

「おい!」

「聞こえてるわよ、何?」

この女、傷つけられる心配が―いまのところ―無いのをいい事に、態度があまりに偉そうだ。しかし、あまり五月蠅く言うと質問に答えてもらえなさそうなのでそこは我慢した。

「八条さくらは死んだと思うか?」

「またその質問?親子揃って同じこと聞いて…暇人ね」

あ、人じゃないんだった。と彼女は尚も前を向いたまま言った。そして、害が辛抱強く答えを待っていると、ようやく言った。

「いいえ、そうは思わない。思いたくない」

「お前達にとって、あの女がそれほどまでに重要なのは何故だ?」

「“救世主”だからってだけじゃ説明にならないの?」

害は言った。

「あの女に、もう救世の武器は無い。いまや、ただの女だろ?」

しつこい追求に音を上げたのか…はたまた単に暇つぶしに相手をしようと決めたからなのか、人間の女は話し始めた。


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