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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…最終章(前編)-21

「お前に僕の何が分かる?お前に、僕らの何が分かる…!」

「わかってるさ…色々とな」

擾に向かい合った神立の目からはまだ涙がこぼれていた。闇夜に光る金色の双眸はらんと燃え、ゆるぎない闘志が漲っていた。

「お前は何もわかっちゃいない…お前が僕らの“親”になれなかった理由も、誰一人お前を愛さなかった理由も…!」

風が吼えた。

「おまえを抱いてやったのはおれだけだぜ、七番」

嵐がやってきたかのように、あたり一面に、無秩序な風の流れに翻弄された破片や瓦礫が飛び交う。

「お前に抱かれても、ちっとも生きている気がしなかった。擾。お前と一緒に居ると、僕は人形と同じだ!」

「だったらなんだってんだよ!お前は、人形以外の何になりてェんだ、七番!」

「七番じゃない!」

擾がナイフを抜き、神立が鎌を放った。

「僕は七番なんかじゃない!!」

真っ直ぐに飛ぶはずのそれは、荒れ狂う暴風に絡め取られて神立の手を離れ、龍のように舞いあがった。

「僕は…神立だ!!」

風が止んだ。

空に舞い上がった鎌が風を切り、直下した。丸腰になった神立に、今、ナイフをつきたてようとしていた擾の、頭から真っ二つに、鎌が入った。

「………!!」

言葉を発する暇もなかった。擾は、両の白い眼をぐるぐると動かしながら、ゆっくりと地面にくず折れた。

彼の塵は再び吹き始めた夜の風に浚われ…消えていった。跡形もなく。



神立は疲れ果てたように振り向き、夕雷の身体を抱き上げた。すっかり冷たくなったその体に、魂の痕跡は残っていない。

「う、ぅ…夕雷…」





まだ、当たり前のように空に太陽があった日が果てしなく遠く感じる。神立が神立という名前を貰ってそうしばらく立たない頃、彼は夕雷に言った。

「僕を、もっと強くして欲しいんだ」

「はぁ?」

夕雷は、神立の頭の上から何とも間の抜けた声で聞き返す。

「強くなってどうすんだ?」

「どうするって…戦うんだよ!」

当たり前じゃないか、と言う神立に、尚も夕雷は言った。


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