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愚かに捧げる
【痴漢/痴女 官能小説】

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愚かに捧げる4-2

「あいつ、君が思ってるほどいい奴じゃないよ。友達って言っておいてなんだけどさ。
少なくとも女の子のこと大事にする奴じゃない」
「どうしてそんなこと・・・!」
思わず声が大きくなり、厚木に窘められる。
少し離れたテーブルの中年の女性と目が合った。別れ話とでも思われているのか。
「トシはいつもいつも、私のこと大事にしてくれました。ちょっとスキンシップ過剰な所はあるけど、私が嫌だって言ったらやめてくれるし、それに」
「他の女に手を出してても?」
「・・・・・・!」
「あいつ、大学で普通に付き合ってる子いるよ。その子と四六時中一緒にいるから、俺は君とベタベタしてるあいつを見て驚いた」
「何・・・」
「俺と知り合った時点では2人は付き合ってたから・・・2ヶ月以上経ってると思うけど」
頭の中がぐるぐるする。うまく思考がまとめられない。
この人は・・・トシの友達で・・・トシが浮気してるから別れろって・・・どうして・・・?
「ところで、名前、教えてくれない?」
「中田・・・真理子」
「ありがと。ねえマリちゃん、俺と付き合わない?」
「は?」
「痴漢されてるとこ見て可愛いって思うなんて俺も変態だなって思うけど。でもトシに騙されてるの見て可哀想だなって・・・俺は絶対浮気なんてしないよ」
「そんな、いきなり言われても・・・」
「だめかな?」
「私はやっぱり・・・トシが好き・・・別れるなんて嫌です・・・」
「これからの人生全部捧げちゃうの?あいつに。あいつの心が君になくても?」
(トシの心が私にない・・・もう、私のこと好きでもなんでもないの・・・?)
「それでもトシが、好き、です」
うつむいた真理子は、厚木の目にうっすら宿った凶暴な光に気づかない。
厚木は軽くため息をついた。
「一途なんだね。・・・でも、バカだよ」
「そうかもしれません。ごめんなさい。厚木さんの気持ちは嬉しいんですけど」
「後悔すると思うよ」
そう呟くと、厚木は真理子と目を合わせないまま伝票を持って立ち上がった。

帰り道。ダメモトで真理子は敏樹に電話をかけた。
厚木の言った、もう夏休みに入っているという言葉が気になったのだ。
厚木の話が本当なら、敏樹は夏休みなのに真理子と満員電車に乗った、ということにならないだろうか?
真理子のことが心配で仕方ないから・・・?だとしたら2ヶ月前から彼女がいるという話と噛み合わない。
厚木が、真理子と付き合うために嘘をついたのだろうか。
厚木には申し訳ないが、そうであってほしいと真理子は願った。
「もしもし・・・?」
「・・・!」
寝ていたのか、気だるそうな声。でも、敏樹だ。
「トシ!?あ、あのね・・・」


次の日曜日。真理子は敏樹の家に向かっていた。
電話で何度問い質しても別れる理由については答えられない、と言う。
それは厚木の話にあった大学生の彼女の存在を真理子に感じさせた。
会ってくれなければ別れないとごねて、ようやく今日顔を合わせるのだ。
敏樹の家は両親が離婚していて、敏樹と母と弟の3人暮らしだ。働きながら二人の息子を一人で育てているせいか、敏樹の家はお世辞にも綺麗とは言えない。
本音を言うとあまり行きたくなかったが、この日は母も弟も夜までいないから、と言われてしぶしぶ承諾した。

敏樹の部屋の惨状は前に来た時よりも酷くなっていた。冬から出しっぱなしになっているのだろうコタツの上には空き缶とスナック菓子、吸殻が山になっている灰皿。
衣類は床に無造作に置かれ、布団が万年床になっている。
真理子の中の敏樹のイメージはあくまで王子様だったから、初めてここに来た時はかなり衝撃を受けたものだ。
敏樹が飲み物をとりに席を立った隙に、真理子はこっそりため息をついた。


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