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愚かに捧げる
【痴漢/痴女 官能小説】

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愚かに捧げる6-3

前にいた中年サラリーマンが静かに真理子のブラウスのボタンを外し始めた。
(え…嘘!)
この人は関係のない顔をしてたのに。
心はボタンを外す手を押さえたいのに下半身に与えられる刺激が、もう限界に達してい
た。
中年サラリーマンは難なくブラウスを開き、下着を押し上げる。
乳首を優しく摘まれた瞬間、真理子の頭が真っ白になっていった。


厚木は叫びだしたい気持ちで全てを見ていた。
真理子に負い目がなかったら人を掻き分けてでも助け出しただろう。
なのにそうできないジレンマ…なにより、少し前までは自分も同じことをしていたのだ

電車が動きだしてからも痴漢二人は真理子を触り続けていたが、もはや彼女に抵抗する
力は残っていないようだった。
ようやく駅に着くと、痴漢二人が真理子の腕を引っ張っていくのが見えた。
慌てて人波に揉まれながら電車を出る。ホームは人身事故のせいで、普段からは想像で
きないくらい人が溢れかえっていた。
「どこだよ…」
呟いたが、導き出す答えはそう多くない。改札が人で埋まっている今、女の子を引っ張
り込めるのは物陰かトイレくらいだろう。
人を押しのけてトイレに向かう。予想に反して男性トイレは入り口から人が溢れ出て並
んでいる。ここに女子高生を連れ込むのは不可能に思えた。
念のため障害者用のトイレを見てみるが誰もいない。
女性用トイレに飛び込むのは流石に抵抗があって躊躇したが、すぐに女性トイレにもい
ないことは想像がついた。さっき男性トイレ前に並んでいる人たちが気がつかないはず
ないからだ。
(じゃあ物陰か?)
だが真理子たちが電車を出てから厚木が出るまで30秒も差がないはずだ。
その間に痴漢の奴らがこの人ごみの中、誰もいない場所を探すのは不可能に思える。
同じ理由で、もう改札を出ているとも考えにくい。
まるで神隠しに遭ったような気分で厚木は改札に戻った。

目の前で人が流れていく。
駅員を怒鳴りつけている人、人を押し分けようとしている人、様々だ。
人と人の隙間に、見覚えのある制服が蹲っているのが見えた。
流れていく人で、まばたきをする一瞬で見えなくなる。
厚木は望みをかけて人をまた掻き分け、頭を下げてそこにたどり着いた。

彼女はパンフレットの飾られたラックのそばで蹲っている。顔は見えないが真理子のよ
うに思えた。痴漢の姿は見えない。諦めて去ったのか。
人が迷惑そうに立ち止まる厚木を避けていく。
厚木は慌てて真理子の隣、壁際に立った。
だが、厚木はここまで来たものの、真理子に声をかけられなかった。
泣いているようだがひとまず無事なのだ。ここで自分が声をかけると更に混乱させるだ
けだと思った。
(これでさよなら、か)
思った瞬間、心臓がドクンと跳ねた気がした。いやだ、と叫んでいるようだ。
(それでいいのか・・・?)
俺はまた逃げているだけじゃないのか?償いをしなければと思いながら、目の前で泣い
ている彼女を置いて去ろうとしている。
彼女にとってこうした方がいい、なんて俺が決めることじゃない。
叫ばれても殴られても、目を見て謝るべきなのだ。たぶん。
意を決して、厚木は真理子の肩に手を伸ばした。


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