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ホントノキモチ
【初恋 恋愛小説】

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ホントノキモチ-2

祭り当日。
『ほら、早く!翔ちゃん待っててくれてるんだから!』
お母さんが下で叫んでいる。
『はーいっ!すぐ行くよーっ』
気合い入れすぎて、髪をまとめるのに時間がかかってしまった。
『行ってきまーすっ』
『はいはい。…翔ちゃん、毎年悪いわね。よろしくね。』
バスの時間がせまっていたので話もそこそこに家を出る。
祭り会場はすでに大勢の人が集まっていた。
『ほら。』
翔が手を出す。
『なに?』
何を求めているのか分からず、首を傾げる。

『はぐれるとまずいし、慣れない下駄なんだから転んだら危ないだろ。』
こういう優しいトコが好きなんだよなー…なんて考えていたら、早速ジャリでつまずいてしまった。
『うあっ』
とっさに翔が手を引っ張り倒れずに済んだ。
『あ、ありがと。』
手を引いた拍子にあたしは翔の胸の中にうまっていた。
『っとに、言ってる側から奈美はこれだよ。』
あたしを体から離しながら笑って言う。
あたしの心臓はバクハツしそうなくらいドキドキしていた。
手をつないで歩いたけど、手の平からドキドキが伝わるんじゃないかと思うくらい…。

人混みを抜け、道無き道を歩く。そこを越えたトコに翔と毎年見ている花火を2人占めできる場所がある。

『やっと着いたな。』
草の上に二人並んで座る。
同時につないでいた手が離され、あたしは自分が翔にとって〔幼馴染み〕なんだと思い知らされる。
『お!始まったぞ。』
翔の視線は夜空にそそがれる。
あたしは…。さっきのハプニングが頭から離れなかった。
さっき、転びそうになった時抱えられた大きな胸。
自分がすごく小さく感じた。
いつの間にか、10センチも身長差ができていた。
つないだ手も去年より大きくて、包まれているみたい
だった。

『どした?』
あたしがぼーっとしているのに気付いて翔が聞く。
『な、なんでもないょ。』
『すごい、ぼーっとしてたケド?』
翔のコト考えてマシタ…なんて言えないから
『花火、キレイすぎて、ね。』
当たり障りない返事を返す。
『…来年も、一緒にこられるといいナ…。』
ぼそっと翔が言う。
『?』
なぜ急にそんなこと言うのか分からなかったけど、あえて聞くこともないかと思って聞き流した。
その言葉の意味は次の日知るとも知らず…。

―ピンポーン。
家のチャイムが鳴る。
誰だ?と思い玄関を見ると、翔のお母さんがなにやらウチのお母さんと話している。
そして10分後帰って行った。
『おばちゃん、どしたの?』
『ん、翔ちゃんのお父さんの転勤が急に決まって、引っ越すらしいのよ。で…』
お母さんの話を最後まで聞かず、玄関を飛び出した。
ちょうど翔の両親が車で荷物を運ぶところだった。
『あら、奈美ちゃん。』
翔のお母さんが声を掛ける。
『こんにちは。翔はいます?』
『部屋にいると思うけど。ごめんね、おばちゃん達、これから出かけるからお茶出せなくて…。』
不自然にならないように笑顔を作り
『大丈夫です。気を付けて行ってきてくださいね。』
そう言って翔の部屋に勢いよく入る。
『翔!!』
『お、奈美、どしたん?』
翔はベットに転がりながら漫画を読んでいた。
その呑気さに腹がたち、しまいには涙が溢れてきてしまった。
突然涙を見せられ、翔はベットから飛び起きる。
『なっ…どうしたんだよ。』
『なんで、何も言ってくれなかったのよぉ…。』
翔はあぁ、そのことか、みたいな顔をする。
『だって、んなわざわざ報告するようなコトでもないかと…。』
その言葉に私の中で何かが切れた。
『…っ。だよね、翔にとってあたしはただの幼馴染みだもんね、別にいなくても何ら生活に支障ないもんね!』
自分でもだんだん何言ってるのか分からなくなってきた。
『奈美?何言って…。』
『あたしはっ、翔のコトがずっっと好きだったのに…っ。』
言ってしまった。つい勢いで。
『…ホントに?』
翔の顔がまともに見られず、うつ向きながら頷く。
『嬉しい。俺も…好きだから。』
翔がぎゅっと抱き締める。
その言葉に驚いて翔を見るといつもの笑顔だった。


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