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ホントノキモチ
【初恋 恋愛小説】

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ホントノキモチ-1

あたし、酒井奈美の恋は突然散ってしまった。
『高野君、好きなんです。』
学年一の美少女がクラスにやって来て告白した。
『…。』
告白された彼、高野翔は驚いた顔をして彼女を見ている。
『付き合ってください!』
こんなキレイな人に告白されて、断る奴なんていない…クラス中がそう思っただろう。なのに翔が言ったのは
『ごめんナサイ。』
彼女は目をうるうるさせ
『…っ誰か好きな人がいるんですか?』
クラス中が注目する中、翔は指を伸ばし
『俺、こいつが好きだから…。』
あろうことか、あたしを指した。
静まりかえる教室。
彼女はあたしをちらっと睨むように見て教室を去って行った。
そしてクラス中の視線があたしにそそがれあたしの周りに人だかりができる。
みんながあまりにも
『どーすんの?』
『すごいじゃん!』
などなどとおもしろおかしく茶化すから
『あ、あたしは翔のこと幼馴染みとしか思ってないもんっ』
つい口が滑った。
ウソなのに…。
ホントはずっと翔が好きだったのに…。
『だってよー。』
クラスの誰かが翔に報告する。
どんな顔して翔を見たらいいんだろう。そんなことが頭をよぎっていたら
『って奈美なら言うと思ったんだよ!』

予想外の答えに翔を見るといつもの笑顔だった。
『本気にした?』
あたしの頭をぽんっとたたく。
『するワケないぢゃん!ばぁか!』
ホントはすごくショックだったけど、バレたくないから頑張っていつもの笑顔で返す。

それからはウチらはいつも通り、家が隣の幼馴染みという関係が続いた。
でもそれであたしは大満足。好きな人のそばにずっといられるから。もし、自分が告白して振られた時、この関係が壊れる方がもっと嫌だったから。

『奈美〜、明日の祭り行くだろ?』
あたしの部屋で夏休みの宿題をしながら、翔が聞く。

『もっちろん!今年もいつもの場所で花火見ようね。』
毎年恒例のお祭り。
最後の花火が見たいけど、なにせ家が祭り会場から遠く親が心配していい顔をしない。
結果、隣人の翔をボディーガードに一緒に行けば家まで送ってもらえるから安心する。
これはあたしには一石二鳥だった。親の安心を得た上に、翔とデートできるワケだから。
『…すんごい楽しみにしてるんだナ。顔、にやけてる。』
ほっぺをつままれる。
どうやら嬉しさのあまりにやけていたらしい。
『えへへっ。ま〜ね!』
―翔と一緒だから楽しみにしてるんだよぉ。

心の中で叫んでみた。


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