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細糸のような愛よりも
【同性愛♂ 官能小説】

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細糸のような愛よりも-2

「な、何ですか」
「お前、一年だろ?」
そうですよ、と俺が返すと、男は歯を見せて笑った。
「俺、年上に見えた? お前と同じ一年だよ」
「へ」
笑いながら男は言って、スパイクの入った袋を手に取る。
俺はまじまじと男を見つめた。
身長は180センチくらいだろうか――俺よりも5センチ以上は高い。
その背と風貌から、てっきり先輩だと思っていた。
おまけに、陸上部に所属したのは一年男子では俺だけだと聞いていたものだから。
「お前何組? 俺、Dの綿貫な」
「Aの絹川(きぬかわ)」
差し出された右手を握り返し、俺は答えた。

「一年生男子は俺だけだと思ってた」
「女子はもうちょいいるみたいだけどな」
トラックの前で軽くストレッチをしながら、俺はグラウンドを眺めていた。
特に部活動が盛んな学校というわけでもないから、野球部以外の部活――サッカー部、テニス部の練習風景はまるでお遊戯だ。
陸上部も、それらと大して差はないのだろうけれど。
「綿貫君、は何で陸上部?」
「綿貫でいいよ」
彼は言って、腕を組みながら軽く欠伸をした。
「この学校、部活に入らなきゃならねえだろ? 何にしようか迷ったんだけど、サボれそうな部活にした」
何という不純な動機だ。
「遊びでやるなら、他の部だっていいんじゃないのか?」
「野球部は論外、サッカー部はカッコつけの奴らばっかり……テニスとラクロスもそうだな。話したい人種じゃない」
「体育館でやる競技は嫌いでね。文化部は人数が多い」
カッコつけの奴ら、という言葉に俺は少し引っ掛かった。
お前はそうじゃないのか。
「人数多い方がサボれそうだけどな」
「分かってねえな。一番活気のない部活を選んだんだよ。それに、たまに顔出したくなった時に人数少ない方が出しやすいだろ」
たまにでも顔を出したくなるんだろうか。というより、顔を出すのならやはり人数の多い方が出しやすそうだけどな。
俺はこの軟派男に尽きぬ疑問を抱いていた。
見かけ以上に適当な奴だが、妙な人懐こさは話していて心地良いと感じた。


「絹川君」
春が終わり、梅雨が始まる。
鬱陶しいまでの湿気に気まで滅入りそうな頃、俺には二度目の春がやってきていた。
「毛利(もうり)」
「今日雨で練習ないでしょ? 一緒に帰ろう」
この湿気だというのに、毛利の栗色の柔らかな髪はそれを感じさせない。
ふわりと揺れる髪から香った石鹸の香りが、俺の鼻腔を突いた。
「あ、ああ」
どきりと胸が鳴り、俺は少しだけ裏返った声を誤魔化すように言った。
「折角一緒に帰るんだし、どこか寄って行く?」
俺の言葉に毛利は嬉しげに相好を崩す。
それから少し照れたような表情を浮かべ、俺の耳元に唇を寄せると声を潜めて言った。
「あたしの家」
「え?」
「今日、寄って。付き合って一ヶ月経つのに、お互いの家に行ったことないでしょ」
ふわりと笑う彼女の笑顔に、俺もまた笑顔で返した。

俺と毛利との馴れ初めは、彼女からの告白だった。
――一目惚れだったの。
そう言ってはにかむ毛利に、俺もまた惹かれていた。
陸上部の部室は毛利の所属する女子テニス部の相向かいにあり、甲高い声を上げてコートへ向かう彼女達の姿はよく見かけた。
綿貫とは違い、俺は雨の日以外はほとんど部活に出ていたから、女子テニス部も俺の姿はよく見かけていたのかもしれない。
陸上部自体の人数が少ない上、部活に出る時にはユニフォームを着なければならなかったから、目立っていたのだと思う。


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