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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The kiss and the light-7

「同月31日、ホワイトチャペルで喉、腹と性器を切り裂かれ、腸が飛び出した状態のまま死んでいる娼婦を発見。9月8日にも、喉を切り裂かれた死体。子宮と性器、膀胱が切除されている。9月30日には二人。まず、午前1時頃に一人。その45分後にもう一人だ。11月9日、25歳の娼婦を彼女の自室で切り裂き、奴は姿をくらませた。」

一人ずつ名前を挙げながら、中谷の目の前に写真を並べていく。粒子の粗い写真で、白黒だが、知りたいことはわかるはずだ。人間の尊厳ごと切り裂き、無残に打ち棄てられた6人の女たちの死に様について。

「つまり、犯人はこの…つまり切り裂きジャックを模倣したと?」

「模倣じゃない」

中谷が何か言いかける前に、再び言った。

「待ってよ、もし今回の事件が模倣でないなら…」

中谷は、次に来る言葉を覚悟していた。そして、その言葉を言われたらどうするかも決めていた。

「模倣じゃない。二百年前に娼婦達を切り刻み、今回の事件の犯人であり、さらにお前を狙っている男。こいつが俺が相手にしてる変態だ」

中谷は立ち上がった。

「あっそ」

そして、目の前に広がっていた書類を手早くカバンの中に突っ込むと、足早に玄関へ向かった。

「おい!」

「もう十分。あんたの頭がおかしいのは黙っててあげる。でもこの事件はやっぱり私一人でやらせてもらうことにする」

「待てよ!」

俺はあわてて彼女の後を追った。

「奴は写真を“俺に”送ってきたんだぞ、“おまえに”ではなく。これは単なる嫌がらせでもなければ、ストーキングでもない。これはルールだ。奴が取り仕切るゲームのルールなんだ」

「ゲーム?」

「そうだ。例外なく」

窓ガラスに映る自分の目が、夜が深まるごとに明るく輝いてゆく。まるで月のように。

「頼む。これ以上殺されたくないんだよ…中身の無い死体を見るのはもう嫌なんだ。俺の言うことを信じろよ」

中谷は、何を言ったらいいのかわからないようだった。自分がどんな表情をしているのか、知ることは出来ないが彼女の表情は真剣だった。

「あんたは有能な捜査官だし、専門知識もものすごい。正直尊敬してる。でも、こんなデマをあたしに聞かせるのはやめて」

ドアノブをつかんで開かないように抑えた。彼女はそれを横目でチラッと見てから、右足で急所を蹴り上げた。頭の中心が核爆発を起こし、数秒間、いや、おそらく1分に近い間、俺の脳は使い物にならなくなった。だから、

「それと、あたしに命令するのもね」

といった彼女のシンプルな言葉の意味を考えるのにも、かなりの時間を要した。


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