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嘆息の時
【その他 官能小説】

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「続・嘆息の時」-3

「おじちゃ〜ん! また来たよっ」

柳原の姿を見つけ、端のテーブルから元気よく手を振ってくる女の子。

「おおっ、有理ちゃん! いらっしゃい! いつも可愛いね〜」

親子の座っているテーブルへ着くと、柳原は満面の笑顔をふりまきながら優しく女の子の頭をナデナデした。

「いまくらいの時間だったら空いてるかな〜と思って来ました」

女の子の母親、涼子がいつものように柔らかな笑顔で言葉をかけてくる。
その爽涼な笑みを見るたび、柳原の心臓は毎回ドクンッと大きく高鳴ってしまう。
豊潤な大人の女性とは、彼女のような人を指すのだろうと思った。
彼女の名は篠塚涼子。二十九歳のバツイチ独身女性。
悪夢の一夜を過ごしたあの日の朝に、彼女とは出会った。
こんなことは思いたくないもないのだが、はじめて涼子の美貌を目の当たりにしたとき、柳原はふとそこに愛璃の顔を重ねてしまった。
美しいラインの眉に、彫りの深い眼元。そこにある瞳は艶やかな長い眉をなびかせ、緩やかに下った目尻へと続いている。それに、ふっくらとした大きめの唇がとても情熱的で、愛璃と同じように、とても純日本人の容姿とは思えないほどだった。
しかし、会話が増えていくうちに純粋な日本人であることが判明した。

「あっ、あの子……」

「えっ?」

涼子が向ける視線に合わせ、柳原も身をよじる。そこには、いま出勤したと思われる滝川愛璃がいた。
愛璃が、柳原たちの視線に気付いて微笑みながら軽く会釈する。

「あの子、ハーフですか?」

涼子が、大人の色気を含んだ笑顔を愛璃のほうに向けながら聞いた。

「あっ、いえ、生粋の日本人だと本人は言ってます。僕も最初はかなり疑ったんですけどね。まあ、名前も滝川愛璃と言いますし、今では純粋な日本人だと思っております」

「愛璃ちゃんか〜、可愛い名前ですね。あれだけ綺麗な方がいたら、店長さんもさぞお仕事が楽しいでしょうね」

「そうですね〜、でも、仕事は仕事ですから。ははっ」

柳原は内心ドキドキしていた。
涼子の聡明な表情が、心の中にある醜い部分を見透かしているように思えたのだ。

「ねえねえ、おじちゃん、明日さあ、一緒に遊園地に行こうよ」

「えっ? 遊園地?」

動揺を必死に隠そうとしていた柳原に、女の子が唐突に言ってきた。

「ダメよ、有理。店長さんはお仕事で忙しいんだから。それに、おじさんって言ったら駄目だって何度も言ってるでしょう?」

「だって、おじさんなんだもん!」

「どこがおじさんなの? ほら、店長さんの顔をよく見てみなさい。どう見ても格好いいお兄さんでしょ?」

微笑ましい親子のやりとりをしながら、涼子と有理がジィーッと柳原の顔を覗き込む。
(うっ……は、恥ずかしい……なんか……とてつもなく、恥ずかしい……)
二人の美人に見つめられ、柳原の精悍な顔はみるみるうちに真っ赤となった。


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