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純白の丘
【初恋 恋愛小説】

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純白の丘-2

「ふふふっ、どうせそんな事と思ってた。気にしなくていいからね。」
「そんな、なんかさせてくれよ。お詫びに。」
とっさに出た言葉だった。もちろん何をしたらいいのか分からず迷っていると、
「う〜んそうだな。・・・・・・。あっ優斗君って香水つけてるよね?それ頂戴。」
「今持ってるのは、使いさしの分しかないけど。これでいいの?」
立ち止まり鞄から香水の瓶を出し先程まで左肩に乗せていた、明日香の手の平に握らせた。
「うんっ、ありがと。この香水なんて名前なの?」
「アクアブルーオムって名前。ほんとにこんなもんでいいの?」
「うん、いいの。ほんとにありがとう。」
明日香は大事そうに鞄の中にしまいまた右手を俺の左肩に置いた。
そのままたわいのない話が続きあっという間に家につきそれぞれの家に入った。
部屋に戻った俺は、以前買った雑誌をひらき読みふけっていた。
いつのまにか外は暗くなり寒さも増してきた。
「優斗ぉ!ご飯よ!」
母に呼び出され俺はトコトコと階段を降りリビングに行く。
階段途中に小さな窓があり明日香の家が見える。
今日はまだ明かりがついていない。どこか出かけているのだろうかと、思いながらテーブルの前の椅子に座った。
父はまだ帰っておらず姉と母の三人の食事だ。
「ユー、手洗った?」
姉には昔からユーと呼ばれている。俺より六つ上で今は某携帯ショップの店員をしている。周りの友人達は皆口を揃えて綺麗と言うが、弟の俺からするとどうとも思わない。
「何一人でぶつぶつ言ってんのよ。」
「いや、読者の皆様に霞姉の紹介を。」
姉の名前はちなみに霞(かすみ)。
「は?何わけわかんない事言ってんの?それより明日香ちゃんの事知ってた?今日の事。」
「ああ、知ってるよ。誕生日だろ?」
忘れてたけど。
「違う、もちろん誕生日だけど、今日から入院の事。手術の話。」
「え?手術?」
知るはずもなかった。いつも通り登校して、一緒に勉強して、一緒に下校してたのに。
あまり頭が回らず、夕飯にも手がつかず、上に上がろうとすると、霞姉が声をかけてきた。
「どうせ家でごろごろしてるんだから、明日学校終わったらおみまい行ってあげたら。病院はS病院だから。」
上にあがり時間を気にせず何も考えずに一点を見ていた。
なぜ言ってくれなかったのか、ずっと考えていた。
ほとんど一睡もせずに朝を迎え学校に行く事にした。
明日香のいない教室はなぜかすごく広く見えた。
長い長い授業が終わりとりあえず明日と明後日は休み。
教室を出ると毎度と同じように、司が立っていた。
「あれ?今日明日香ちゃんは?」
相変わらず痛いとこをついてくる。まあ司に隠しても仕方ないので事情を話した。
「そうか、多分お前に気つかわしたくなかったんやろな。そう気落とすなや。今日見舞い行くんやろ?よろしく伝えといてや。あ、あとお前ちゃんと明日香ちゃんに気持ち伝えや。ほなのぉ!」
妙にこの時司が頼りに見えた。
単純かもしれないが、司と友達で良かったと思えた。人を馬鹿にはするけど、本当は人一倍優しい。
気を取り直し病院に向かうことにした。
病院は電車で三駅行ったところなので、三十分あれば着くだろう。
駅前でケーキが売っていたので四つほど買い電車に乗った。
司に言われた早く気持ちを伝えろっていうのが気になっていた。
例え早く気持ちを伝えてもそれが実るとは限らない。
かと言って伝えないことには始まらない。
第一手術が終わって見えるようになったら、俺の顔が分かるのだろうか?分かったとしても顔を見て嫌われたりしないんだろうか?
もう何年も俺の姿を見てない明日香の気持ちは分からない。


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