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バッドブースター
【学園物 官能小説】

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バッドブースター-5

永遠とも思える一瞬が過ぎた後……
二人は、風呂で汗やその他様々な液体を洗い流し、シーツをかえたベッドにその身を並べていた。
「何か、一気に行き着くとこまで来ちゃったって感じだなあ」
佑助が感慨深げに一人ごちた。
佑助と藍が出会ったのは数ヶ月前。それから程なくして、お互い意識するようになったはずなのに、これまで全く進展がなかった。それなのに、ひとつの事件を発端として、想いを伝えあうどころか、恋人としてのステップをいきなりすっ飛ばしてエッチまでしてしまったのだ。
「そのキッカケはいいものじゃなかったよ…」
藍が複雑な表情で言葉を返す。なんと、藍は着替えを持ってきていた。最初からそのつもりだったようだ。
「でも、誤解だったわけだし……」
「でも、イヤだった。結局、お姉さんだったけど、すごくショックだったんだから」
藍は主人にすがる子犬のような目で佑助の瞳を覗きこむ。
こういう顔は反則だろ…と佑助は感じた。全てを女の子の方に有利に傾ける力がある。
佑助は、藍の顔を引き寄せ、優しくキスをした。それだけで恋する少女は表情を和らげる。
「尚子から連絡きた時、思ったの。誰にもとられたくないって…」
藍は佑助の胸に嬉しそうに顔をうずめる。
「これで私達、もう恋人だよね?佑助君、私のものだよね?」
胸のなかから佑助を見上げる藍。
「浮気したら、許さないから」


――さらに翌日――
アグニの名を受け継ぎ、二時間サスペンスの代名詞としても用いられる曜日――

――まぁ、つまりは火曜日。

佑助、藍が通う公立高校では、すでに一限目が終了していた。
にもかかわらず、二人は姿を見せていなかった。
「遅刻常習犯の佐々木はともかく、渡辺まで学校に来ないなんて…」
「これは何かあったよね」
佑助はともかく、藍の恋慕はクラスの女子には知られていたので、話は自然にそちらへ向かう。
「何かって…まさか!?」「ふたりっきりで夜遅くまで!?」「キャー、マジで!?」
浮いた話の少ない真面目な進学校である。騒ぎは休み時間という触媒を利用してますます伝染していく。
「ね〜ね〜尚子。どう思う?」
当然尚子の元にも話題は持ち込まれる。
「さあね、分かんないよ」
実は嘘である。昨日、藍を佑助の所へ行くようにたきつけたのは他ならぬ尚子であるし、なにより藍からの、『ありがと♪』というメールで全てを察していた。
まあどうせすぐに答えを知ることになるだろうし、自分が質問攻めに遭うのはイヤなので、黙っておくことにした。
と、その時――
――ガラッ――
閉めきっていたいたドアが開けられた。多量の期待の眼差しが、そこに向けられる。
「……な、何?」
ドアを開けた途端の異様な沈黙。突き刺さる視線。
佑助は思わずたじろいだ。
「どうしたの?」
期待通り一号の後ろには、期待通り二号――藍がいた。

――確定――

クラスメイト達の脳裏を漢字二文字が駆け巡る。
たちまち、冷やかしを大いに含んだ歓声に包まれる。
「ヒュー!熱いねおふたりさん!」
「ふたりで仲良く寝不足かよ!」
「ほどほどにしとけよ!いくら若いからって!」
――この生暖かい騒音は、二限を担当する教師に制止されるまで続いた。


――放課後。
佑助と藍は並んで歩いていた。
だというのに、佑助の表情は、恋人と歩くそれではなく、残業帰りのサラリーマンのような疲れ果てたものだった。

ふたりの経緯は、藍によってあっさりと暴露された。
いちいち騒ぎ立てるクラスの…どころか、同学年の生徒。
いちいち女生徒にからかわれ、可愛く照れる藍。
いちいち男生徒にからかわれ、恥死する佑助。
――というわけであった。
「疲れた…」
そんな佑助のすがたに、藍は苦笑した。
「……」「……」
「……何?」
声にしなくとも、通じる心。その近さに喜びを噛み締めつつ、
「藍は…恥ずかしくないの?」
ずっと聞きたかった質問をぶつける佑助。
「恥ずかしくないわけない…けど、コソコソ付き合ったりするの、何かイヤだなって思うから」
自然な笑みと共に返してくる藍。
「……そっか」
つられて頬がゆるんでくる。
(もう少しおとなしいと思ってたんだけど……)
藍の顔を捉えながら、そんなことを考える佑助。
藍の行動の大胆さは、昨日佑助の家におしかけてきた時からである。おそらくあの時の成功が、佑助と自分の想いが繋がっている事を知ったことが、おとなしかった少女に自信と積極性を与えたのだろう。
(……ん?まてよ?)
ふと、思う。
(俺、自分から何もしてない……?)
そんな考えが浮かんでくると、急に焦りを覚える佑助。なにか、自分からできることはないのか…?
臆病な少年は、周りに人がいない事を確認してから、
「……あっ」
藍の手をそっと握った。

〈了〉


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