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『暖かい雪』
【純愛 恋愛小説】

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『暖かい雪-4-』-1

どうしてかなんて、俺にもわからない。

ただ何故か、どうしようもなく、彼女に惹かれている。



正月後の冬休みを利用して訪れた新潟は、純白の雪に覆われている。
そう、彼女のように、純白の。


『純白』、『純心』などの言葉を自分より8つ下の娘に当て嵌めると、何だか変態と呼ばれる類になりそうだが、
俺は決して、そんな下心があるわけではない。

ただ、ただ…彼女を見ていたく、少しでも多く話したいと思う。


自分がこんなシンプルな恋をするとは、正直思わなかった。




この宿に泊まってから、一週間が過ぎた。

「水沢さん、お茶入りましたよー!」

宿の管理人の姪である清水舞子にあっさりと一目惚れし、今では毎朝この声で起きる。


そして彼女は俺の宿泊部屋を頻繁に訪ね、ちょくちょく話せる仲になっている。

人見知りはするし、たいして面白い話が出来るわけでもない俺を訪ねてくれるのは嬉しいが、何しろ小さな宿だ。
他に若い客がいないから、いい話し相手になるのは俺ぐらいなのだろう。



…自惚れは、危険だ。


今時の19歳にしては、厚かましいまでの馴れ馴れしさもなく、必死に飾り立てたような風貌でもない。
スッと俺の心に心地よい風を送ってくる。
舞子はそんな娘だ。


「今日はどこに行くんですか?」

朝食後のひととき。
庭をぶらぶらと歩いていた俺のすぐ隣まで歩いて来て、舞子が聞いてきた。

「んー…どうするかな。」

彼女の背丈上、多少上目使いになった視線を受けて、一瞬の戸惑いを隠しながら俺は間抜けな返事をする。

「どうするかなって…自由ですね、いいなぁ。」
彼女は笑う。


本当は、自由でも何でもない。
期待の重圧に息苦しくなっている、引き継ぎたての『社長』などという名の、重苦しいイスに座らされて。


「東京じゃこう自由にはいかないし。」

俺の言葉に、彼女はそうでしょうね、と返した。

「…じゃ、朝風呂でも行ってくるかな。」

「いってらっしゃい。」


彼女との会話は、いつもこの程度。
互いに、一歩踏み込んだ話はまだした事がない。

それでも、充分満たされている自分がいる。


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