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歌声は絶えず今も響いてる
【片思い 恋愛小説】

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歌声は絶えず今も響いてる-4

「深夜のバスでこの街について、それからずっと彼処で歌ってて。
なんか眠くて、どうせ私の歌なんて誰も気に止めてくれないし、
私の存在だって誰も気にしてくれいんだなーって、このまま此処で寝ちゃおうとか思って横になったら、声をかけられて。
透明人間な気分だった私に気付いてくれる人がいたんだ!みたいなよくわかんない感動とかしちゃって。
もう一度会いたいなって思ったけど、名前と学校名わかってもどうしようもないから、
だったらこの場所で待ってれば、きっと会えると思ったからだよ」


僕は口を動かすことが出来なかった。
照れてるのも理由のひとつだけど、何よりも透明人間という表現が
彼女より自分に当てはまる気がして、僕は何故だか口を開けば涙が出そうで、
彼女にただ困惑した顔を向けるだけだった。


「とりあえず、今日はありがとう。明日も駅で歌うから、私の存在を確認してってね!ついでに歌も聞いてってね」
そう彼女は言い残し、席を立った。僕は彼女が店から出ていくのを見届けてから席を後にした。





────翌日
いつもの朝は“いつも”と形容するには、日常から遠ざかりすぎていた。
理由の見当たらない緊張、心の高ぶり。
自分が自分じゃないような気分とはまさに、こんな感じなんだと納得。

駅につくと、昨日と変わらない波が流れ僕を飲み込む。
この瞬間、僕はなるほど透明人間だなと、彼女の言葉を反芻していた。
噂をすればなんとやら、僕の日常を破綻させた歌声が、鼓膜を揺らしていることに気付く。

僕は戸惑いながら、その声の生まれる場所を目指す。
僕の眼球は彼女の、ナオの髪を網膜に映し出した。
鼓動が速まる。運動はしていないはずなのに。
ぎこちない体を動かし、ナオに声をかける。
朝だからな、と
「おはよ」我ながら無愛想な声だ。

それでもナオは綺麗な顔をくにゃっと潰したような、猫のような印象を受ける顔で僕に笑いかけてくれた。

「残念なんだが学校に遅れるわけにはいかない」
という言葉で僕は原因不明の、気まずさを隠すように自転車に乗りその場を去る。

学校での時間は頭にはナオのことしか浮かばなくて。
出会って一日の人間についてどうして、僕は思考を稼働させているのだろう。

そんな風に放課後になり、朝と似通った緊張に包まれて駅についた。
ナオを探す僕の視界には、彼女の姿を捉えることが出来なくて。


かわりに、昨日からナオがい続けた場所に一枚のMDが、ケースに入れられ置いてあった。
それを拾いあげると、
『song by NAO』
の文字が目についた。

ケースの中には、狭いとばかりに一枚のノートが折り畳まれていた。
それを開けばおそらく曲名であろう僕の名前と、歌詞らしき文字が並び
紙をひっくり返せば、それまた僕の名前と“ナオだよー”と書き出した、手紙らしきものになっていた。

嫌なことしか想像出来ない。
昨日の明後日は明日だから…と自分自身に言い聞かせ、文字を読む。


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