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願い
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願い-5

「お帰りなさい、パパ」

「ただいまアリス、今日はお土産があるんだよホラ」

「わぁお人形だ!ありがとうパパ!」

 アリスと呼ばれた少女は、私を男から受け取ると満面の笑みを浮かべて私の頭を撫でた。感覚はないけれど頭を撫でられるなんて久々な私はこそばゆい気持ちになった。少女はそのまま私を抱きしめるも興奮しすぎは良くないぞと咎める男にそっとベットサイドに置かれる。
 そして、その日から少女のベッドサイドが私の居場所になった。

「おはよう」

 朝一番にそう言って私に笑い掛ける少女を一番嫌いな人種だ、そう思った。
 何時でも馬鹿みたいに笑ってて、残飯を漁るような生活も雨風を凌いで軒先で一夜を過ごす生活も知らない、世界の甘い部分しか知らない癖にこの世は素晴らしいなんて思っている世間知らずで甘えた存在、そんなことを思っていた。

「暇だねぇ」

 少女は体が弱く、特に呼吸器官が弱いのか少しでも無理をするとその日の夜には発作を起こして止まらない咳に苦しみ、屋敷を走り回ることさえも医者から禁じられていた。学校にも通えず自宅療養の日々、両親からの一身の愛情を受けてはいたけれど、仕事で両親のいない昼間は少女にとって退屈な時間でしかなかった。
 

「エーニャは何が好き?」

「エーニャの前の持ち主さんはどんな人だった?」

「エーニャも外に出たいよね?」

  少女は私にエーニャと名前を付け、両親がいない時間によく話し掛けた。勿論私は返答など出来ないから少女の一方通行だったけれど少女は毎日嬉しそうに私に話し掛けてきた。

「パパとママがいないのは寂しいけどエーニャがいるからいいんだ、パパからのプレゼントだから。パパとママはいつも構ってあげれなくて御免って言うけどこうやってプレゼントをくれる、私はそれでいいんだ。プレゼントを考えている間とかあげるまでは私の喜ぶかどうか気にしてる、その間はお仕事よりも私がパパとママの頭の中を埋めつくしてる。私はそれで充分なんだ」

 少女は照れたように小さく笑うと秘密ね、と言ってまた笑った。
 初めての感覚だった。羨ましいと思い、それと同時に甘えた存在などと思ってしまった事を申し訳なく感じた。少女は少女なりの悩みもあるけれどもそれを卑下することなく笑顔でいれる少女、反対に独りぼっちだからと考えることすら逃げてばかりだった自分を恥た。

「それにしても今日も暇ねぇ」

『そうね』

「今日は雨だから滅入るね」

『そうね私も雨は嫌いだわ』

 その日から少女の独り言には聞こえない返答がつくようになった。



 そうして数ヶ月経った冬の寒い夜、コホコホと小さな咳がその日はやけに酷かった。

 息が吸えないともがくように喉を掻き毟る様な仕草に異常性を感じて少女の顔色を窺う。


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