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桜が咲く頃
【ファンタジー 恋愛小説】

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桜が咲く頃〜ある日の出来事〜-4

鈴はすぐさま
『悪かった』

矮助は鈴を見る。

『変なこと聞いて、悪かった』
軽く頭を下げる鈴。

矮助は少し笑い
『俺の母親は自殺したんだ』

鈴は、ぱっと頭を上げる。

『とても優しい人だったらしい』
矮助は微笑み、川の方を向き話を続ける。
『優しくて、家の後継者争いに耐えられなくなって…
ある日、まだ小さかった俺を抱いて飛び降りた。
でも俺は助かって、こうして生きてる』
矮助は鈴を見て、にこっと笑う。
『俺の母親にとって、この世は辛いものだったろうから、せめて今は幸せであってほしいな。
鈴は、あの世はあると思う?』

鈴は欄干に寄りかかり
『どうだろう。
ただ、この川があの世に繋がっていたら、そうしたら、これが届くかもしれない』
そう言って、こんぺいとうを一粒投げた。

こんぺいとうが水に沈む音が耳に響く──

『俺も投げていい?』
矮助が尋ねると、鈴はこんぺいとうの入った袋を差し出した。
矮助は軽く一掴みすると、思いきり投げた。
こんぺいとうは綺麗な弧を描き、可愛らしい音を立てながら、川に吸い込まれていく──

『綺麗だな…』
矮助が呟く。
同じことを考えていた鈴は、どきっとして矮助を見る。
『ん?』
矮助が微笑みかける。

『いや…』
鈴は思わず顔をそらす。
矮助が自分と同じように感じていたことが、嬉しくて、恥ずかしくて…
『帰るぞ!』
ぶっきらぼうに言い、先に歩き出す。

『え?鈴!?』
矮助も慌てて後を追う。

二人は並んで帰って行った――


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