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Not melody from you
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Not melody from you
:Side-right
-6

「千草の事を最初に聞いたのは、山本からなんだ」
「何て言ってたの?」
「可愛くて、女の子らしいって」
「……」
「変なやつだって」
「でしょうね」
千草は深い溜め息をついた。
その仕草といい、先ほどのためらいがちな口調といい、それはやけに千草らしくない気がした。
「さっきも言った通り、興味本位で私に近づいて来る人は、結構居たわ」
「うん」
「でもそういう人はね、最後は必ず私から離れていってしまうの。私がさっきみたいな話をする度に、言葉を濁して曖昧に笑って、次第に私から離れていくのよ。みんな『変なやつだ』って言って。山本君も、その一人だった」
「今度殴っといてやろうか、山本」
「やめなさい。山本君は間違ってないわ」
千草は少し寂しそうに目を伏せた。
揺れた髪がキラキラと月の光を反射した。
「そういう人達は間違っていないのよ。自分が変だと思うものに近寄らないようにする事は、自分の身を守らなければならない、動物の本能のようなものだわ。それは生きていく上でなくてはならないものなの」
だから、間違ってない。
そう付け加えて千草は一層寂しそうな目をした。
千草でもそんな目をする事があるのだなと思い、そんな当たり前の事に今更気付いた自分に、少し落胆した。
「だからあなたが最初に学食で話しかけて来た時、ああ、またかって思ったわ。ああ、またわざわざ私をからかいに来たのか、って」
「興味本位なのはそうだったけど、ぼくは別に千草をからかおうなんて思っていなかったよ?」
「ええ。あなた、私の話をやけに熱心に聞いていたからね」
ぼくはその時の事を改めて思い出した。
その時のぼくは確かに千草の言動に少し面食らってはいたけれど、それを拒否しようなんて思いもしなかった。
まるでよちよち歩きが出来るようになったばかりの子供がクレヨンを紙に押しつければ線が引けるのを初めて知った時のように、ぼくにとってその時の千草はただただ新鮮だった。
「私、驚いていたのよ。私の話を積極的に聴こうとする人なんて、あなたが初めてだったから」
「そう…」
世の中の人間の目は、主に節穴と濁ったビー玉でできているらしい。
「ねぇ。あなたも私を変だと思う?」
「変だなんて思わないよ。ただ少し変わってるとは思うけど」
「同じ字よ」
「え?」
「変、と変わってる、は同じ字」
「ああ。そうか、うん」
そう言われてぼくが次の言葉を探していると、千草はふるふると首を振って
「違う、そんな事が聞きたかったんじゃないの」と呟き、悲しそうに伏せていた目をぼくに向けた。
「ねぇ、ずっと聞きたかった事があるの。最初にあなたと会った時からずっと。それを聞く為に私はここに来たの」
悲しそうに伏せられていた目は、今度は不安げに揺れていた。
「他の人はみんな私を変だって言うのよ? なのになぜあなたはそんなに私に近付こうとするの? なぜあなたはそんなに私に好意を抱いてくれるの?」
千草の揺れていた瞳が、一層不安そうに揺れた。
まるでテストの出来が悪かった事を自己申告している子供のような、これから自分は傷つけられんだ、と分かっているような、そんな表情だった。
多分、千草はその問いを何度も何度も自分の中に押し込めてきたんだろう。


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