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Blackmail
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Black mailU-10

「あのダミー会社を作って利益を隠したのは私なんだ…」

飯島は無念そうな表情を浮かべると、

「直ちに緊急役員会議を開いて私は引退する」

 飯島は席を立つと窓の外を眺めながら岡野に言った言葉は、別れの言葉のようだった。

「岡野君。 今後は君を守ってやれなくなるよ…」




 岡野が飯島の部屋を後にした直後に緊急役員会議が開かれ、満場一致で飯島のヤマト証券社長からの引責辞任が決定した。 そして次期社長には、 2階級特進で常務の大田原が抜擢された。
 これは副社長の田沼や専務の川崎という飯島色の強い役員を払拭し、クリーンなイメージで出直そうと考えるヤマト証券にはぴったりの考えだった。




───


 翌週。 飯島の自首により、国税局と東京地検の捜査がヤマト証券に入った。 飯島には脱税、外為法違反、政治家への献金の疑いが懸けられ、特に野党議員達からは彼が行った贈賄を立証して、与党大物議員の逮捕状を請求しようと息まいていた。

 ひと月後、国会にて飯島の証人喚問が行われた。 だが、彼は執拗な質問責めにも一切何も喋らず、そのために偽証罪を被った。

 そればかりでなく東京地検による取調べに対しても、彼は自分の関与以外は黙秘を続けた。

 飯島は全ての罪をひとりで負うつもりだった。

 そんな彼の元を訪れる者があった。

「お久しぶりですね…」

 飯島の背中を冷たいモノが走る。 彼の前に現れたのは恭香だった。

「確か…JP・モ〇ガンにヘッドハンティングされたハズじゃ……」

「エエ。 今じゃ日本支社の社長です」

 飯島の問いかけに誇らしげな表情を見せる恭香。

「連日の報道で社員達は戦々恐々としてるし、投資家の一部からは、損害賠償請求を受けてるそうで…ヤマト証券も大変ですね」

 飯島の顔色が変わった。 損害賠償の話はヤマト社員の中でも、ごくひと握りの者だけが知っている事だった。

 その瞬間、飯島の頭がスパークした。

「…そうか…あれはオマエの仕業だったのか……しかし、これもビジネスのルールだ。 仕方なかろう」

 苦々しい顔を向ける飯島。 その顔を見て恭香は笑顔を浮かべる。

「先に仕掛けたのは貴方でしょう。 岡野を使って朝霧をけしかけ、私を破滅させた。 違いますか?」

 険しい顔で恭香を見つめる飯島。 しかし、視線を逸らし大きく息を吐くと笑みを浮かべた。


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