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水泳のお時間
【その他 官能小説】

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水泳のお時間〜2時間目-3

「……」

思い切ってつま先を差し出したわたしは、確かめるように水面に触れてみる。
そしてそのままゆっくり、ゆっくり足先から膝にかけてを水の中へと慎重に差し入れていった。

「…っ」

だけど、そこまで来てあたしは行きづまってしまった。
何とか太ももまで水に浸かることは出来たけれど、そこから先に進む事がどうしても出来なかったから。
やっとの思いで腰をあげようと手に力を込めるものの、自分の体とは比較できないくらい大きな水面を目の前に、どうしても脚がすくんでしまう。
後ろで瀬戸くんが見ているのに。昨日より一歩でも成長した自分を見せなくちゃいけないのに。
そう思った瞬間、わたしは泣きそうになってしまった。

どうして?どうしてわたしはこんな簡単なことすら出来ないの?
瀬戸くんに呆れられたくないのに。
あと少し、あと少しなのに…っ



「!」

するとその瞬間。
後ろで様子を見ていた瀬戸くんが突然プールに飛び込んだ。
いきなりの出来事に、わたしはとっさに顔をあげる。

「せ、瀬戸くん?!」
「あっはは。びっくりした?」

驚いて目を丸くするわたしに、プールに浸かったまま瀬戸くんが肩を揺らしながら楽しそうに笑う。
そしてそのまましばらく笑っていたかと思うと、彼はとたんに穏やかな眼差しを向けてわたしにこう言ってくれた。

「少しずつでいいよ。まだまだ時間はたくさんあるから」
「でも…」
「おいで」

瀬戸くんはそう言い、戸惑うわたしの方へゆっくり歩み寄ったかと思うと、何も言わず両手を差し出してくれた。
おそるおそる視線を戻してみると、目の前では顔を傾けながら優しく微笑んでいる彼…。
その甘すぎる瞳に、わたしは一瞬で虜にされてしまい…
気がつくと、わたしは無意識に両手を伸ばし、まるで吸い寄せられるようにそのまま瀬戸くんの首筋にしがみついていた。



わたしの体は瀬戸くんに抱っこされる形で、水中へと沈められていく。
聞こえてくる、ポチャポチャと水の弾いて揺れる音。
水の中はきっと冷たいと思っていたのに、逆に熱いくらいだった。
そう感じたのはきっと、わたしの体が緊張しているから…。

「…っ…」

瀬戸くんの腕に抱きかかえられながら、わたしの手に思わず力がこもる。
…どうしよう。
わたし、さっきまではあんなに水に入る事を恐がっていたはずなのに。
それよりもとにかく今はうるさいくらいドキドキ言っているこの胸の音を、瀬戸くんに聞かれていたらどうしようなんて、そんな事ばかり頭の中をグルグルと回ってる。

「似合ってるね、それ」

そんな事を考えていると、いつの間にかわたしの足はプールの地面に届いていて、わたしの体から手を離した瀬戸くんがふいに口を開いた。
わたしはその言葉にハッと我にかえり、慌てて顔をあげる。


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