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水泳のお時間
【その他 官能小説】

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水泳のお時間〜2時間目-10

あ……

「ま、待って!」

気がつくと、わたしはとっさに瀬戸くんを呼び止めていた。
わたしの声に、瀬戸くんが足を止めてこっちをふりかえる。

「なに?」
「あ、え、えっと…その…」
「ん?」
「な、何でもないです…」
「はは。なんだよ?」

途中で言いかけようとしてやっぱり止めてしまったわたしに、瀬戸くんは肩を揺らして笑った。
だけどそのとき見た笑顔があまりにもキレイで、見とれてしまって…
思わず赤くなってしまった顔を見られてしまわないように、わたしは慌てて下を向く。

「さ、さっきのはまた今度、聞くことにします…」
「…そう?わかった」
「……」
「じゃあね」

わたしの言葉に、瀬戸くんは特に気にかけてくれる様子もなければ、必要以上に追及することもなくて。
またいつものように目を細めて笑ったかと思うと、瀬戸くんは今度こそプールサイドをあとにした。
その姿を目で追い続けながら、やっぱり思い出してしまうのは…昨日聞いた、瀬戸くんの言葉。


“どうして?そんなの決まってんじゃん”

“桐谷が、好きだからだよ”


わたしは瀬戸くんの後ろ姿が見えなくなるまで、いつまでもその背中を見つめていたけれど、
一度も瀬戸くんがこっちを振り向いてくれる事はなくて…やっぱり昨日の言葉はわたしの聞き間違いだったのかなと、そんな事を考えてしまう自分いる。

「…っ」

…とうとう瀬戸くんの姿は見えなくなってしまい、その瞬間、わたしは思わず胸に両手を当て、それをギュッとにぎりしめる。
そして小さく、今にも消え入りそうな声であの人の名前を呼んだ。

「…瀬戸くん…」

片想いしていた頃にはもう二度と戻れない。
たとえどんな事をされてしまっても、嫌いになれないのは。
それはきっと、近づけば近づくほど、この心があなたに溺れていくから…。


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