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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 10-1

いつの間にか、窓から小さく見える山は真っ赤に色づいていた。


「奏のご両親、最近来ないな」
「元々、ほとんど来れないんですよ」
「…そうだったな」
だからこうやって、俺がリハビリに付き添えるんだし。

「はいはい、集中!」
アキが手を叩く。
「は、はいっ」
「……」

奏は今日もリハビリだ。

「はぁっ…はぁっ…」
「はい、ゆっくりね、そう」

素人の俺にはどうなっているのかわからないが、きっと上手く事は運んでいるのだろう。

奏はこんなに頑張っているから。



「じゃあ奏ちゃん、そろそろ手を使わずに立ってみようか」
「…え?」
もうそんな時期なのか?
「元々、小さい頃からずっと準備はしてきてるみたいだし。マッサージとかね」
「…」
「そろそろ体がついてきてもいい頃だと思う」
「大丈夫、ちゃんと倒れそうになったら支えるから」
アキはにっこりと笑った。
「…奏、やってみろよ」
「…春陽さん」
「案外、もう歩けるようになってるかもな」
俺はハハッと笑ってみせる。
「ハル!リハビリをなめないで」
さっきの笑顔とは打って変わって眉がつり上がる。
仕事をしているアキは恐い。
「奏ちゃんはまだこれからいくつもステップを踏んでいかなきゃいけないの。一番身近にいて支えなきゃいけないハルが軽口叩いてどうするの」
「……悪い」
俺は振り返って奏を見る。
「奏、いけるか?」
「私、やってみます!」
奏は両手で握り拳を作った。


「……」
奏は手すりを持ってゆっくりと立ち上がる。

言われてみれば、今までガクガクと揺れていた足は大分安定しているように見える。
もう何ヶ月か経つが、やはり少しずつ進歩してきたんだな。

「いきます」
ゆっくりと奏は手を離した。
「きゃっ!」
だがすぐに前のめりに倒れそうになる。
俺とアキが慌てて支える。
「大丈夫か?」
「……ます」
奏は聞き取れない声で呟いた。
「え?」
「いけそうな気がします」
奏からは並々ならぬ気合いが感じられた。
「頑張れ!」
「はいっ」
もう一度奏は立ち上がり、ゆっくりと手を離す。

「……っ」
「いいぞ奏!」

奏は見事に足だけで立ったのだ。

「っ」
だが、一歩足を踏み出した途端、崩れ落ちてしまった。

とっさに俺が抱き止める。

「よしよし、よく頑張ったな」
俺は頭を撫でてやる。
「えへへ…」
奏は疲弊しながらも、俺の胸の中で笑った。


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