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『本当の自分……』
【少年/少女 恋愛小説】

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『終わりの闇、始まりの光』-5

「私は……由佳よ。」
まるで、どうして?とでも言いたそうに彼女は私を見つめていた。
「私も、さっきまではそう思っていたわ。名簿の名前を見るまでは……」

私の言葉に彼女の顔に動揺が走る……

「教えて!!あなたは誰なの?ヨシキ……なんでしょ?」
「ち、違うわ……。私は、由佳……よ。」
怯えるように彼女は後ずさる。
「じゃあ答えて!!何で会ったコトもない祖母の為に泣いていたのか……何で、双子である筈のあなた達の名前が同じ《漢字》なのかを……」
小さく首を振りながら彼女は更に後ろに下がった。
「違う……違うわ……」
「ヨシキ……」
「やめて!!その名前で私を呼ぶのはやめて……」
彼女は両手で自分を抱き締めると、ガタガタと震え出す。更に私が近寄ろうとしたとき、叫び声が足を止めた。
「由佳!!由佳、大丈夫?あんた、一体この娘に何したの!?」
突然、飛び出して来た女性……見覚えがある。あの時、公園にいた人……確か名前は……

「弥生……さん?」

しかし、彼女は私など気にも止めずに、しきりに由佳の心配をしていた。
「由佳、歩ける?圭子姉!手を貸して!!」
「待って!私はまだ…」
「悪いけど、あなたと話すコトなんかないわ。」
車から降りて来た女性は、由佳に手を貸して連れて行く。
「行かないで、まだ話しが……」
「耳が聞こえないの?あんたと話すコトなんかないって言ってるのよ!!」

私を見る弥生の目……それは、敵意剥き出しの怒りに満ちた眼差しだった。
「話しがあるのは、あなたじゃなくて彼女よ!とにかくどいて!」
今、彼女を逃してしまったら二度と会えないような不安に、私は声を荒げた。
「いいえ、どかないわ!!圭子姉、私はいいから由佳を先に送って!お願い、早く!!」
女性は頷き、彼女を助手席に坐らせるとドアを閉めて運転席へと走り出す。
「ヨシキ!!」
「やめて!あの娘をこれ以上苦しめないで!!」

苦しめる?私が彼女を?この人は何を言ってるの?私はただ知りたいだけなのに……。けれど、エンジン音が響き渡り、私と彼女を残して車は走り去った。
「彼女に何を聞きたいのか知らないけど、一つだけ言えるのは、あなたの恋人だった彼は……もう、どこにもいないのよ……」
彼女はそう言い残し、私に背を向けて歩き出す。

この人は知っているんだ、全てを……。そう私は直感した。

「お願い教えて……あなたは知っているんでしょう?」
私の言葉に彼女の歩みが止まる。
「知ってどうするの?」
背を向けたまま、彼女が呟いた。

《知ってどうするの?》

私は言葉を返すコトが出来なかった。何故なら真実を知るコトだけが目的だったから……
「あなたの自己満足の為に、あの娘を苦しめるなんて出来ない。私は傍にいるって約束したの……。そして、彼女を護るって自分に誓ったのよ。だから、由佳を傷つけるなんてコト、絶対に許さない。」

口調こそ静かだったものの、まるで何かに耐えているように彼女の握った手が微かに震えている。
「ちょ、ちょっと待ってよ。彼女を傷つけるつもりなんてないわ。私はただ……」
「まだわからないの!?あなたが知ろうとするコト自体が由佳を苦しめ、傷つけるってコトが!!もう、あの娘に……私達に関わらないで!!」
そこで彼女は、初めて振り返った。両頬を伝う雫……彼女は泣いていた。

「興味本位で首を突っ込まないで……」
呟くような彼女の言葉に、私の中で何かが弾ける。

興味本位?
首を突っ込まないで?

「ふざけないでよ……」
私の口から自分でも驚く程の低い声が出た。
「そうやって人を部外者扱いする気?私が何一つ傷ついてないと思ってる訳?冗談じゃないわ!!」
私は叫んだ。感情が爆発する……今まで抑えてきた想いが溢れて行く。
「ヨシキが突然いなくなって、連絡先もわからなくて、捜す術(すべ)すらなくて、ただ彼からの連絡を待つだけの二年間がどんなものだったか、あなたにわかるの!?」
いつの間にか、私の声は涙声になっていた。
「いろいろ考えた。私のコト嫌いになったのかな?病気になったのかな?……。でも、やっと手掛かりを見つけたのよ?それを知りたがるのがそんなにいけないコトなの?それを咎める権利があなたにあるの?答えてよ!!」


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