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『本当の自分……』
【少年/少女 恋愛小説】

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『終わりの闇、始まりの光』-4

「す…ごい、綺麗……」
部屋から出て来た私を見て、弥生は呟く。
「あなたもそう思う?弥生」
少し得意げに圭子さんは、にっこりと笑った。そして、身支度を整えた私達は彼女の車で葬儀場へと向かう。


「緊張しているの?」
ハンドルを握りながら、圭子さんは呟いた。
「いえ、そんなコト…」
私はそれだけ言うと口を閉ざしてしまう。喪服に着替えた自分、そして近付く葬儀場……。口ではそう言ったものの、高まっていく緊張と不安に、私は上手く喋れなかった。

しばしの間、沈黙が訪れる。そして、再び彼女は口を開いた。
「後で三人で美味しいものでも食べに行こうか?」
「大賛成!!私、お寿司がいいなぁ……由佳は何がいい?」
「こら!あんまり高いのはダメよ?ふふふ」
二人はきっと、私の緊張を解きほぐそうとしてくれているのだろう。だけど、
「私は……何でもいいです。」
私にはそれしか言えなかった。


「本当に一人で大丈夫なの?」
葬儀場に着き、車を降りて歩き出そうとした私に弥生が言う。
「大丈夫よ……だから、待っててね弥生。」

ただお焼香して来るだけなんだから……

まるで自分に言い聞かせるように私はそう言って、葬儀場の中へと足を踏み入れた。


(同時刻…真壁魅也)

彼女は来るのだろうか?私の思考は、ただその一点に集約していた。彼女の母は『伝えておきます』と言っただけで、明確な返事はしてもらえなかった。

けれど、私は確信めいたものを感じている。理由なんてないけれど、必ず彼女は来ると思っていた。

弔問客の中にまだ彼女の姿は見えない。ずっと待っていた私が、半ば諦めかけた時……彼女は現れた。

記帳を済ませ、祭壇に向かう彼女を私は見つめていた。傍目に見ても、はっきりとわかる女性特有のラインと長い髪、そして驚く程に美人だった。確かにヨシキに似ている、だけど今の彼女はまるで別人に思えた。

やはり、私の思い過ごしなのだろうか?焼香を済ませた彼女は遺影に向かい、手を合わせている。その横顔を見て、改めてヨシキはもういないのだと私は溜息をついた。これですべて終わるのだろう……と、次の光景を見るまではそう思っていた。

遺影を見つめる彼女の頬を一筋流れるもの……。それを見るまでは……

「…嘘…どうして……」
私は自分の目を疑った。

何故?なぜ?ナゼ?

全身の毛が逆立っていく。私は何かに突き動かされるように受付に走り、弔問客の名簿に目を走らせる。そして、見つけてしまった彼女の名前を……

数々の疑問は一つの線で結ばれて行く。しかし、それでもなお、私には信じられなかった。名簿から顔を上げ、私は彼女を探す。すでに祭壇に姿は見えず、私は出口へと走った。彼女に会わなくてはならない……

全ての答えを知る彼女に……

何故、私は彼女の名前を漢字で見るまで気付かなかったのだろう……

そこに記された名前

……《由佳》に……


出口を目指して走る私の意識は、つかの間中学時代へと飛んだ。


『なぁ、魅也。俺の名前って変じゃね?』
『そぉ?私は好きだけどなぁ……ヨシキって。』
私がそう言うと、学生服の少年は首を振った。
『そうじゃねーって!漢字だよ漢字!!』
『あっ!そのコト?』
意味を理解した私に同意するように、少年は頷く。
『ウチの親も、何考えてんだか。お陰でしょっちゅう女に間違われるんだぜ?まいるよな……』
『確かにね、漢字だけ見たら、ヨシキって言うよりもユカだよね。』
『だろぉ?グレちまうぜ俺は……』


追いつけないのだろうか……。必死に走る私は、出口ギリギリで彼女の姿を捕らえた。
「待って!!」
私は絶叫に近い声で彼女を呼び止める。驚いたように振り返った彼女は、私を見て小さく頭を下げた。
「待って、ヨシキ!!」
そこで私はようやく彼女に追い付く。
「どうして、その名前で私を呼ぶの?私は……」
「教えて下さい。あなたは誰?」
彼女の言葉を遮り、私は尋ねた。


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