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陽だまりの詩
【純愛 恋愛小説】

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陽だまりの詩 9-4

***

朝、奏から電話があった。

今日の夕方、お父さんが病院に来るらしい。
本人はお節介かもと言っていたが、俺にとっては数少ないチャンスが巡ってきたので連絡をくれたのは助かった。

やはり奏も俺とお父さんの仲が良くなることを望んでいてくれるのだ。

奏にお礼を言って電話を切ると、俺は出勤の準備を始めた。




仕事はあまりうまくいかなかった。
雑念が相手に伝わったのか…
でも、今回ばかりは嫌でも頭の片隅に残っている。

絶対に…

そう呟いて病院へと向かった。



とりあえず、ベタだがケーキを購入して病室に到着した。
いつものようにノックをすると、すぐに奏のどうぞ、という声が聞こえた。
「…失礼します」
ゆっくりと扉を開けた。
「お疲れ様です」
「…あれ」
「あ、まだみたいです」
奏はえへへ、と笑う。
「そ、そうか」
急いで来すぎたか…
苦笑いしながら折りたたみ椅子を開いて座る。
「ケーキ買ってきたから、冷蔵庫に入れていいか?」
「ふふ」
「ん?」
俺が病室に備え付けてある冷蔵庫に手をかけたとき、奏は笑った。
「気合い入り過ぎですよ」
「…」

俺は奏と離れたくないんだよ…
簡単に引き裂かれたくないんだ…

そのためなら、出来ることは何だってやる。

どんなに小さいことでも。



ふいに扉がノックされる。
「美沙、入るわよ」
「うん」
お母さんだ。

「あら、春陽さん」
「どうも」
俺は立ち上がって頭を下げると、折りたたみ椅子をもう一つ開く。
「あらあら、そんなに気を使わなくてもいいわよ」
「あ、いえ、恐縮です」
「私はあの人と違って春陽さんのことは認めていますよ」
「え…」
「それより先日はごめんなさいね。あの人熱くなっちゃって。私が代わりに謝ります」
「いえ!そんな!」
「奏を、お願いしますね」
「……はい」
お母さんはうふふ、と笑う。

なんとなく丸め込まれた気がする。
それにしても、宥め方や謝り方、喋り方…
お母さんは本当に奏にそっくりだ。

いや、奏が似たのか。

「そうだ、お母さんも一緒にケーキ食べませんか?」
「あら、買ってきてくれたんですか?」
「はい、どれでもお好きなのをどうぞ」
「あっ!待ってよ!私が一番に選ぶのー!」
奏もお母さんの前では無邪気なものだ。


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